■ I ran away from a bad witch.
耳を塞いで、目を閉じた。
これ以上、現実なんて見たくなくて、
彼が私を拒絶したあの顔が今でも忘れられない。
屋上で一人、風を感じる。
あれから半月。
私はあれ以来、家には帰ってない。
灰音とも草芽くんとも会ってない。
ただ、一人誰にも見つからない場所で、物語が進んで行くのを見る。
物語は確かに進んでる。
灰音と高成様は本当の恋人になった。
閑雅様も、最近灰音とお逢いになられたらしい。それは、終わりの合図。
「また、一人でいるんですか?」
『………』
後ろから聞こえるその声を無視して立ち去る。
「灰音さんが探していましたよ。」
『……そう。』
それだけ言って、私がここから立ち去ろうとすると、グッと腕を掴まれる。
目があった。
「貴女は…!貴女は、いつまで、こんなこと…!」
『こんなこと?こんなことって、私が誰かとセックスすること?それとも、身体を売って人の家に住んでること?ねぇ、どっち?郵便屋さん。』
歪な笑みを彼に向ける。
別に、汚れきってる身体が今さらどうなろうと関係ない。
もう元には戻れないんだから、もっともっともっと汚れてしまえばいい。
『私程じゃないにしても、郵便屋さんだって、自分を偽ってるでしょ?ねぇ、まおら。それとも、一ノ宮由貴?』
「っ、知ってたんだ…、」
『……』
「ねぇ、ならこれも知ってる…?僕は、君のことが、白雪のことが好きだよ。だから…、」
『嘘つき。』
一ノ宮由貴が私のことを好き?
嘘。嘘だよ。
物語は変わらない。
変わらないから、私はこんなに苦しんでる。
『生徒会の恥になるから、私の行為を止めるの?なら、私は生徒会なんて辞める。』
「なっ…!」
『もう、』
死 ん で し ま い た い
茫然と立ち竦む彼を置いて、私はその場を立ち去った。