すごい音がしたのが部屋の中からでもわかった。
立ち上がって私は歌を歌う。
さようならの唄。もう、一生ここには戻らないことを心に決めて。
歌い終わったあとに扉の前に立つ。
『壊れて。』
ポツリ、そう呟くとパキンと音を響かせて私の部屋にあった扉の南京錠は壊れた。
本当はずっと前から逃げられた。
でも、アーロンに支配されて、恐くて、弱かった私は逃げようとしなかっただけ。
私が外に出ると、麦わら海賊団のみんながほとんど暴れたあとのようで下っ端たちがたくさん倒れていた。
『もう、やめて。』
そうポツリと呟けば、その場にいる人全員に注目を浴びた。
その注目を浴びながら、私はスタスタとアーロンの前に立ちはだかる。
後ろには血がたくさん流れている男の人二人。
『もう、貴方は終わり…』
「おいおい…我が一味のお前がなんてことを言うんだ?」
キッと睨むように言えば、アーロンは私の頬を撫でる。
ゾワリと寒気がした。
『っ、触らないで!!!!』
言霊を使ってアーロンを縛る。
それでも、アーロンはうまく縛れない。
だって、私はアーロンを畏れてるから。
恐くて恐くてたまらない。
そばにいるだけでガクガクと身体が震える。
再び、アーロンが私に触れようとした。
「アーロンッ!!!」
『ナミ…』「ナミ」「ナッちゃん…」
辺りに響いた声は私の大切な人の声。
それに安心して笑みを零す。
「今ちょうどどこぞの海賊どもをブチ殺そうとしてたところだ。何しにここへ?」
「てめェを殺しに…!!!」
下唇を噛みながら麦わら帽子を被ったナミは言葉を放った。
アーロンがナミ相手に話してる間に私は二人をアーロンから離す。
とくに、ロロノア・ゾロは私の識る通り鷹の目とやってきた後なんだろう。すごい傷だった。
「ナミ…ナマエ…お前たちにもう一度聞こう。おれの仲間だと言えば村の連中は助かる。こいつらの仲間だと言えば、村の連中も殺す。おれの仲間か、こいつらの仲間か…どっちだ…?」
私は、もう、答えを識ってる。
貴方に私を拘束する権利はない。
ナミと目を合わせて頷く。
「ごめんみんな!!!」
『私たちと一緒に死んでください!!!』
「「「「「「ぃよしきたァ!!!!!!」」」」」」
「…なるほど全員ブチ殺し希望か…」
アーロンがそう呟いた時だった。
大きな噴水のような水が広場の裏から見えた。
「ブゥーーーーッ!!!!…っっぱァ!!!!」
「なんだ!!?」
「きたか!後は足枷をはずすだけだ!!」
「!…なんだ、そういうことか…」
周りにいる人たちに安心したような空気が溢れる。
これが、彼の物語の主人公の力?
あぁ、やっぱり彼らはすごい。
『私も、』
強く、なりたい。
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bkm