外が騒がしくなった。
きっと、アーロンが戻ってきたんだろう。
でも、私には関係ないから。
一人、蹲りながら私は私を押し殺して外の様子を伺っていた。
少しすると騒がしい声が止んだ。
そのまま蹲っていると、カタンと私の部屋の扉が開いた。
私の部屋に来るのは人が限られてる。
ナミと、アーロンと、それから三人の幹部たち。それだけ。
「ナマエ。」
『ナミ、血だらけだよ…?手当てしなくちゃ。』
「…いらない。」
入ってきたナミの両の手のひらは血だらけだった。
片手には短剣、もう片手には海図を握ってて、私の識ってる出来事が起こったことがわかった。
痛々しいその手に治療しようとすると、ナミはプイと顔を逸らし、私に甘えるように抱き着いてきた。
それにクスリと笑って頭を撫でる。
『ダメだよ。…それに、今からベルメールさんのところに行くんでしょ?』
「!…ごめん。」
『?なんで謝るの?』
「だって…ナマエは会えねぇのに、俺だけ…」
『気にしないの。それに、ナミの話聞くのだけでも、私は楽しいよ。』
ぽんぽんと赤ん坊をあやすようにナミの背中を摩ってから私は立ち上がると、ナミの手の治療を始めた。
ナミSide
世間では俺の姉と呼ばれるナマエはただただ不安定だった。
八年前も今も、ゆらゆらと不安定で、いつか、いつか、消えちゃうんじゃないかって、そればかり考えてた気がする。
俺は一億ベリー貯めて、この村とナマエを買わなくちゃならない。
それがアーロンとの約束だから。
今回も、そうだった。
女装して、本当の性別を偽って、金を巻き上げる。
それがいつものやり方。
ルフィたちだって俺が女だって信じたし、それでよかったはずだった。
旅をしていくうちに仲間になりたいなんて思わない、はずだった。
なのに、
「ナミがウソップを殺すわけねェだろうが!!!!おれ達は仲間だぞ!!!!」
あいつが変なことを言うから、俺までおかしくなりそうになる。
「オイ、誰が仲間だって?ルフィ。」
「!」「ナミ!」
まるで悪魔を見るように俺を見るジョニーと俺が来たことを喜ぶやつが数名。
馬鹿じゃねぇの。
「お前は俺の仲間だろ。帰るぞ。」
「勝手なこと言うな。大迷惑だ。笑わせんなよ?仲間だ?くだらない助け合いの集まりだろーが。」
「!」
ギロリと睨みつけながらルフィに言ってやった。
仲間、なんて思わないはずなんだ。
俺はナマエを、村を救うために何人でも裏切り続けるんだから。
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bkm