アーロンたちがいなくなったのを確認してからガチャリと鉄の扉を開ける。
『逃げて…』
「ん?」
ナミはココヤシ村に向かった。
今いるのは私と下っ端だけ。
この人なら充分逃げられるだろう。
「あんたは…、」
『お願い。ナミを、助けてあげて。あの子は、ここにいちゃ駄目なの…』
ポロポロと泪を出して俯きながら彼に、ロロノア・ゾロに懇願する。
私じゃ、あの子を助けられない。
「…それはおれらが決めることじゃねぇ。」
『…、そうだよね。とにかく、貴方だけでもここから逃げて。私はもう、部屋に戻らなくちゃいけないから…』
暗い闇のような部屋を思い出す。
私の今の居場所。
もし、もしも彼らが私の識ってる通りに事を進めてくれたら、ナミも私も解放される。
他力本願かもしれない。でも私はそれに縋りたい。
『これ、貴方の刀。』
「…悪いな。」
『気をつけて…、』
ニコリと笑うと私は小走りで自分の部屋に戻った。
後ろで、彼が何か言いたそうにしてたけど、私は聞こえないフリをした。
八年前、私がここに無理矢理閉じ込められてから、ここはずっと私の部屋だった。
そこで、私は喉が枯れるまで歌を歌わされ、玩具としてアーロンに支配された。
私が外に出るのは誰かを尋問する時だけ。
でも、あの子たちが来てくれるなら何か変わるかもしれない。
私も、ナミも支配から解放されるかもしれない。
そしたら、愛おしい愛おしいあの笑顔に再び会えるかもしれない。
それだけを願って、私は今日も暗い地下牢のような部屋で歌を紡ぐ。
遠い、遠いもう一人の自分がいる記憶を思い出しながら、
『ノジコ…ごめんね…、』
私が成り代わってしまったあの人に、歌を捧ぐ。
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bkm