I need you! 2




「ナマエ!」


暗い地下牢のような場所に明るい声が響く。
それに泣きそうになりながらも必死で笑みを作る。


『帰って、きちゃったの…?』
「っ、当たり前だろ?俺の居場所はここだから。」


優しくて、悲しい子。
私なんか見捨てて麦わら海賊団になればよかったのに。


『ねぇ、ナミ。』
「……ん?」
『ナミはさ、こんなことしなくていいんだよ?ベルメールさんと一緒にいてあげてよ。』


自分を育ててくれた愛おしい笑顔を思い出しながら、縋るように私を抱き締めるナミの頭を撫でながら呟いた。


「いいんだよ。ベルメールさんだって俺がナマエといること望んでる。それに一億まであと七百万ベリーなんだ。やるしかねぇだろ。」


二カッと笑うナミに罪悪感しか出てこなかった。

私はナミも助けるために、あの人に成り代わったんじゃないの?
犠牲になるのは私だけでよかったのに。

左胸につけられたアーロン一味の印に爪を立てながら、ナミにバレないようにポロリと泪を零した。


ガチャリと扉が開いて光が射す。
それに目を細めながら、ナミを抱き締める力をギュッと強めた。


「おい、ナマエ。仕事だ。」


その言葉に何も言わずにスクリと立つ。
仕事だから仕事だからと心を殺して。

汚い私の手を繋いでくれるナミだけが今の私の心の拠り所だった。


クロオビに連れられて、私たちはアーロンパークの広場に向かう。
その間、ナミはずっと私の手を繋いでいてくれた。

私たちが着くと居たのはアーロン一味と包帯をグルグルと巻かれた上に手足を縄で縛られた男。
チラリとナミを見ると、驚いたように目を見開いていた。

それを確認すると、私は後ろからアーロンに話しかける。


『私は、その男になにをすればいいの…?』
「シャハハハハ…やっと来たか。」
「!!?な…!」


男はナミが来たことに驚いたように目を見開いた。

いや、それともナミの格好かもしれない。
今のナミは男の格好だから。


「こいつらは我らがアーロン一味の誇る有能な"測量士"と"拷問士"だ。」
『……』
「おまえらの脳ミソとは出来がちげぇからな。あと、こいつは拷問したことねぇだろ。」


ギロリとナミはアーロンを睨む。

でも、ナミ。
拷問士、それも間違いじゃない。
だって私は無理矢理話を聞き出すんだもん。


「測量…!?…おいナミ!!!何でお前がコイツらと仲良くやってんだ…!!!」
「何だ。おめェの知り合いかよ。」
「バカ言うな。ただの獲物に決まってんだろ。」
『もう!…いいから、アーロン。私のすることは、なに。』


私が大声を出したことにみんなが驚いて私を見る。
アーロンだけは楽しそうに嗤っていたけど。


「あぁ、お前はこいつに仲間の話を聞いておけ。」
『……わかった。ナミ、』
「しょうがねぇ。」


ヒョイとナミは男を担ぎ上げる。

あ、そんなに乱暴に扱ったら痛いよ。
大丈夫かな。


「アーロンさんアーロンさん!!」
「どうした同胞よ。」
「もう一人の鼻の長ぇ奴を取り逃がしちまった!!」


後ろから聞こえた声に、ナミと男が苛立ったような気がした。


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