かくれんぼ 15


最近、百物語というものが流行っているらしい。

あれ?これって原作なのかな。

なんて思うけど、残念ながら私に確認する術はない。

とりあえず、鯉伴と別れようかなって思ってます。


「先生ー、山吹先生はどう思う?!」
『ん?』


最近ほっつき歩いてる鯉伴にイライラしながら、お花に水をあげていると、寺子屋の生徒が私に話しかけてきた。

寺子屋では山吹名前で通ってます。
だって、奴良って苗字はこの辺で有名なんだもん。恥ずかしいからヤダ。

ちなみに、この私に話しかけてきた生徒さん。
私の覚えているカナちゃんにそっくり。
てゆか、みんな私の覚えているリクオの友達にそっくり。


『で、なぁに?その話。』
「妖ですよ!妖!その百足にかまれるとたちまち死んでしまうんですよーー!!」
『あ…妖?』


妖といって思いつくのは組の人たち。
てゆか、そもそも私も妖なんだけどね。


「毒をとるには犬の小水が効くらしいですよ!!」
「えーバッチィ」
「おかげで犬が虐待されて…生類憐みの令が出されたとか」
「なんか急にうさんくさくなってきた。」


無邪気な子どもたちに、フワリと笑みが零れる。

ワイワイと騒ぐ子どもたちに、クスクスと笑いながら門まで見送る。
その間も子どもたちは、小さな体で必死に私に話しかけてくる。

そんな子どもたちを見ると胸がほっこりと温かくなる。
あぁ、なんだか鯉伴にムカついてた心が洗われるよう。


『じゃあ、他の子たちが怖がるから、あんまりそのお話はしちゃダメだよ。』
「ハーイ先生!」
「また明日ねー!」


元気にお返事をして手を振る子どもたちにクスクスと笑う。

子ども、欲しかったな。

なんて思っても鯉伴との子は作れないのを知ってるから、なんにも言えないけど。


「名前様…おつとめごくろーさんです。」
『ひゃぁっ、』


ふ、と耳元で聞こえた声にくすぐったさと、驚きで軽く悲鳴をあげながら、後ろを振り返る。

すると、そこにいたのはモロ首と胴体が離れている首無さんの姿。


『び、びっくりした…、』
「申し訳ございません」
『まあ、いいですけど。それより子どもたちが生首を見たら怖がってしまいます。ちゃんと生首は隠してください!』
「はぁ…」


首を胴体にくっつくくらいに近付けて、マフラーのようなものを整える。


「時に名前様。ここに鯉伴様は来られませんでしたか?」


ピシリと、首無さんの言葉に身体が止まる。

そして子どもたちのおかげで、いっときは忘れていた鯉伴への怒りがフツフツと沸き上がる。


『…鯉伴なんて知らないです。』
「最近見ました?あの人…」
『………見てないです。』
「(怒ってる怒ってる。)」


最近会ってない鯉伴にムスーッと口を尖らせる。

絶対絶対戻ってきても口聞いてあげない。
もう知らないんだから。

ここのところ、ずーっと遊び歩いてる鯉伴。
どうせ浮気だ。女の人のところに通ってるんだ。


「まったくあの人は、このご時世まで…、変な妖がウロウロしてるってのに…」
『………あ。』


その言葉に一瞬だけ、昔の記憶が過る。
たしか、このままだったら、


「ちょっ、名前様?!」


首無さんに背を向けて、子どもたちの帰った方向へ走る。

もし、もしも一瞬過った記憶が正しいなら、子どもたちが危ない。

子どもたちが無事でいますように、と願いながら、私は走った。


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bkm
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