かくれんぼ 12


「着いたぜ。」


そう言って鯉伴の見る方に目を向ければ、大きなお屋敷。

中からはたくさんの妖気が漂ってくる。


『行きたくない。てゆか私、鯉伴がどういう人だかも知らないのに…』
「体にしっかりと刻み込んでやる。」
『変態。』


顔を赤くしながらプイと鯉伴から目を離すとクックックッと笑う声。

鯉伴ムカつく。


「とりあえず親父にあって、それからお袋な。」
『……勝手に決めないでよ。私、鯉伴が…す、すきとは言ったけど、結婚するなんて言ってない!』
「知るか。」


ニッコリと笑顔で言う鯉伴に対し、底知れぬものを感じた私はなにも言えなかった。

てゆか怖かった。
今さらだけど、私は厄介な人に捕まってしまったらしい。

五十年後、無事に逃げられるといいな…、

鯉伴はそんなことを考えている私を地面におろすと、私の肩に腕をまわして屋敷の扉を開けた。


「お、親父。ちょうどよかった。オレ、この女と結婚する。」


すぐにぬらりひょんが出迎えてきたので、鯉伴は穏やかな笑顔でぬらりひょんにそう伝えた。

その時のぬらりひょんの顔は絶句、という感じだった。

それから、鯉伴の首をとって私から離れると鯉伴になにかを言ったようだった。

チラリとぬらりひょんが私を見る。


「あんた…いいんじゃな?こいつの嫁は…ちと大変だぜ。」
『…覚悟、してます。もし、鯉伴が私以外の人に目移りをしたら、すぐに出ていくので安心してください。』
「ありえねぇよ。」


即答した鯉伴にジト目を送りつつ、私はぬらりひょんにニコリと微笑む。


『……名前と申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします。』


これが私の幸せな五十年間の始まりだった。


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bkm
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