泣きそうになりながら、鯉伴の手をそっと離すと私は今度こそ鯉伴から離れようとした。
『きゃぁっ、』
でも、鯉伴はそんな私の行動を許さず私を横抱きにした。
わけがわからなくて鯉伴を見る。
すると、何故か口付けされた。
『なに、するの、?』
「おめぇはもうオレのモンだ。」
『そんなこと言ってない!私は鯉伴とは一緒にいられないって…!』
「んなことしるか。」
『なっ、』
驚いて鯉伴をジッと見れば、鯉伴の目は真剣で冗談を言ってるようには見えなかった。
『……私は鯉伴と一緒にいたくない。』
「オレぁ一緒にいてぇ。」
『死にたくない。』
「死なせねぇ。」
『…鯉伴なんて嫌い、』
「名前を愛してる。」
穏やかに微笑む鯉伴はすごく、すごく綺麗で、
神様っていうのが、もしもいるなら、
私は鯉伴と、五十年でいい。
五十年でいいから一緒に歩ませて。
鯉伴の首に手を回して私は戻れないことを知りながら呟く。
『ほんとは、ね、』
「……」
『鯉伴が、すき。あいしてる、よ。』
これで、私はもう戻れないんだと、
知りながら、私は鯉伴に想いを告げた。
「やっと、か。」
『?』
「よし、行くぞ。」
私が言った言葉にそう呟いた鯉伴は私を横抱きにしたまま、部屋を出ようとする。
え、意味がわかんない、
『えっと、どこに?』
「夫婦になりに行くに決まってんじゃねぇか。」
『………え、』
「あぁ、もうオレから逃げられると思うなよ?」
なんだか私、早すぎる答えだったんじゃないかな。
なんて思っても後の祭りとはこのことだったと、後ほど知ることになる。
『鯉伴?ねぇ、聞いてる?本当にどこに行くの?』
ガクガクと横抱きにされたまま鯉伴の肩を揺さぶる。
ちなみに鯉伴はぬらりひょん。私たちに気付く人はいないみたいだ。
夫婦になるってどこに行くの…
てゆか私夫婦になる、なんて言ってない…
「オレの家。」
『……鯉伴、おろして?』
「おめぇはもうオレの女だろ?」
『っ、そ、そんなこと言わないでよ!』
鯉伴の言葉にボンッと顔が赤くなる。
オレの女って、なんか恥ずかしいからヤダ。
顔が赤いのを必死で隠すために鯉伴の首に手を回して顔を埋める。
するとなにを思ったのか、鯉伴が「誘ってんのかい?」とか言ってきたから首をちょっと絞めておいた。噛まなかっただけ偉いと思え。
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bkm