かくれんぼ 10


鯉伴Side

頬を赤くして目から涙を零しながらグッタリとオレの腕の中で倒れた名前が愛おしい。


「ったく、素直じゃねぇなァ…」


そっと名前を布団に寝かせ、髪を撫でながら呟いた。

だいたい、あの言葉はオレを好きだっつってるもんだろ。
それに気付いてねぇのか?

そのまま名前の髪を梳いていると、首の辺りに虫に刺されたような赤い跡が見えた。

……あの男かぁ?

それに収まってきてた怒りがまた沸々と湧き上がってくるのを感じて、名前の腹に跨がる。
ガシリと名前の着物を掴んで一気に剥いだ。

赤ん坊のようにすべすべで色の白い肌、それに自分の手に丁度収まりそうなこぶりの胸。
それがあまりに綺麗で思わず見惚れるが、所々に見える鬱血痕が邪魔だ。

太ももにもついてんじゃねぇか。

その日は結局明け方まで名前の肌を堪能してから寝た。
もちろん、名前の鬱血痕はオレのつけたものにしといた。


名前Side

目が醒めたら私はベッドの上で寝てて、今までのことが全部夢だったら。

何回それを期待して目を醒ましたんだんだろう。

でも、いつからか私が目を醒ますと鯉伴が笑いながら私の名前を呼んでくれてて、

本当は嬉しかった。
恥ずかしかったけど、鯉伴が名前を呼んでくれたから、笑ってくれたから、

ぼんやりと目を覚ますと、鯉伴がまだ目をつぶって寝ている姿が目に入った。
無防備に寝ている鯉伴にクスリと微笑む。

きっと、きっと鯉伴と逢うのはこれで最後にする。
鯉伴が好き。好きだよ。
でも、私はまだ生きたいから。

鯉伴に震える手でそっと触れる。


『すき…』


ポロリ、一言それを出せばたくさんの【すき】が溢れる。

涙が出てくるけど、きっとそれは幸せだからだよ。悲しいからじゃない。
だって、私は鯉伴に逢えて幸せだった。

そっと鯉伴から離れて何故か始めよりも着崩れている着物を整えて、私は部屋を出ようとした。


「どこに、行くんだい?」
『っ、』


でも、それは後ろから私を抱き締めてきた鯉伴に止められた。


「オレのことが好きなんだろ?」
『!…起きて、たの…』
「いや、おめぇの声で目が覚めた。」


その言葉に私は馬鹿だと自嘲する。

クルリ、私を抱き締めたままの鯉伴を見ようと振り返る。
それから鯉伴の胸に手を当てた。

ドクンドクンと鯉伴の心臓は動いてる。
私は、この動きを止めたくない。


『鯉伴、私は鯉伴と夫婦にはなれないよ。』
「……なんでだ?」
『だって、私まだ生きたいんだもん。』


ニコッと笑った。

私は確かに鯉伴が好き。
でも、それと同時に私は死にたくない。


『すき、すきだよ。あいしてる。けど、』
「もう、いい。」
『っ、』


呆れたようにそう言い放った鯉伴にビクリと震えた。
私から言ったのに、呆れられてもしょうがないのに。なんで、私こんなに恐いの。

自分の弱さに泣きたくなった。


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bkm
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