『ん……?』
何かにジッと見られてる気がして重たい瞼を開いた。
「おはようさん。まだ寝ててもいいんだぜ?」
『…………………』
「ん?どうかしたかい?」
『な、ななななんで、ここに?え?なんで一緒に寝てるの?はえ?あれ?え?』
私の目の前には色気ムンムンで今にも私と口付けが出来る位置にいるあの男。
え?なんで?あれ?
関わりたくないのになんで、私はこいつと一緒に寝てるの?
「クッ…今さら恥ずかしくなったてぇのかい。」
『っ、』
そう言ってグイッと男は私の腰を掴んで自分の方に引き寄せる。
私の顔のすぐそばに男の顔が来る。
とゆーことは男の顔もよく見えるってことで、
ボンッと自分の顔が赤くなるのがわかった。
「こんな顔赤くして…誘ってるのかい?」
『っっっっ!は、離せ馬鹿!近付くなぁ!』
バシンッと男の頬をおもいっきり叩いた。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
今朝、あの男を撃退してから私はいつものように山吹のお世話をしてから町におりてきた。
久しぶりの町なので思わず頬も弛む。
簪に綺麗な着物。
特に欲しいわけでもないけど、それらを見ながら町を楽しむ。
すると、ドンッと何かとぶつかった。
その拍子に私は尻餅をつきそうになる。
けど、それは間一髪で相手の人が私の腕を引いたことによってなんとか体制を整えられた。
『っ、あ、ありがとうございます、』
「い、いや大丈夫だ。心配するな。」
『本当申し訳ありませんでし………、』
顔をあげて相手を見る。
思わず固まった。
相手はあの男の側近だった。
思わずジッと相手を見ると相手は訝しむように眉を寄せる。
そこでやっと私の意識は戻った。
『あの、ぶつかってしまい申し訳ありませんでした。』
「あ、あぁ。いや、そんな謝るな。」
『ごめんなさい…。』
俯いて彼に謝る。
なんで私はこうやって逢っちゃうんだろう。
私は彼らと関わりたくないのに。
『では、私はもう行きますので。申し訳ありませんでした。』
「こちらこそ悪かったな。」
『いえ。では。』
そう言って私とあの男の側近は何事もなく別れた。
歩いて側近と別れる。
私の歩みはだんだん早くなる。
私はそのまま路地に入るとその場に蹲った。
『あはは…』
馬鹿みたいだ、私。身体が震えてるや。
別にあの人たちは私になにもしてないのに。
今朝、あの人が私に触れた時私は、なんでだろう。嬉しいって思ったの。
馬鹿な私は前世の記憶に囚われて、あの人が好きなの?あの人は私を見てくれない。私の、山吹乙女の容姿しか見てくれない。
それに、私と彼では子を成せない。
彼はいずれ私じゃない女性と結ばれるの。
あはは…本当、ばっかみたいだ。
それに山吹乙女は彼に殺される。
彼と出会わなければ、彼女は生きていられたのに。
そうだよ。私はまだ死にたくない。
幸せに生きていきたいの。
だから、
『会いたくなかったのに。』
彼らと逢って私はなにか変わったの?
ねぇ、私は向き合おうと決めた?
彼らを見ると私の弱さが浮き彫りになる。
あぁ、
誰かが私を助けてくれたらいいのに。
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bkm