『プテ、ありがとう。』
「♪」
『……行こう。』
レッドのお面をしっかり被って、私はマサラタウンに降り立った。
グレンじまでカツラさんを助けて、プテラを復元できた。
これで、レッドの仲間たちが揃った。
私とレッド、唯一違うところは、私がブイを連れているところ。
本当なら、ブイは預けるべきだった。
けど、私はそれをしなかった。
ーー物語を、知っているから。
ブイをオーキド博士に預けることによって、いろんな人が傷付く。
でも、一番はブイが傷付くから。
もう、私はブイに傷付いてほしくないの。
ロケット団に捕まって、なんにも悪くないブイはたくさんたくさん傷付いた。だから、私はブイのトレーナーとして、仲間として、ブイを守る義務があるから。
『私の、エゴだね…』
「ピーカ?」
『ううん。早く、オーキド博士のところに行こ。』
肩にのってるピカを撫でると、オーキド研究所を目指して走った。
▽
『な、んで、?』
オーキド博士がいない。
代わりにいたのは、ユンゲラー。
ユンゲラーをピカに倒してもらいながら、頭はグラグラと揺れる。
ブイをオーキド博士に預けない限り、オーキド博士たちは無事だと思ってた。
違うの?それは、間違い?
「ふふ…どうかしら?ユンゲラーの特別製さいみん術は?」
『……』
「今まで、ずいぶんと我々の邪魔をしてくれたらしいわね。今日はほんのごあいさつよ。」
『…ぁ…、』
「本物の博士、そしてこの町の人間を救いたければ…、ヤマブキにいらっしゃいな。」
私の、せい、?
私が、ロケット団なんかに関わったから、?
でも、だって、それは、レッドだから、
心が押し潰される。
なにが最善かわからない。
でも、私はレッドを殺したんだから、
そう、そうだよ、
しょうがないよね?
しょうがないんだよね?
「ナマエ…?」
『か、なくちゃ、』
「おい…お前、大丈夫なのか?」
グリーンの声が聞こえた。
答えなくちゃ。
『ああ!さっさと、オーキド博士たちを助けに行こうぜ!』
だって、私はレッドでいるしかないんだから。
“私”の居場所はこの世界にはない。
この世界にあるのは“レッド”の居場所だけだから。
ねぇ、だからグリーン。
そんな悲痛そうな瞳で私を見ないで。
私は私を一生赦さない。
彼を殺して、この世界にいる自分を。
ピカたちから、彼を奪った自分を。
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bkm