彼の軌跡をなぞる私 5




レッドと同じように、私はマサキさんを助けた、マチスを倒した、ニョロはニョロボンに進化した、カビゴンのゴンをゲットした。

すべてが今のところ順調だった。



ザーザーと雨が降る中私たちは町を走る。
みんなが疑心暗鬼になっている町、シオンタウン。
フジ老人の話は聞いて、レッドと同じように私はポケモンタワーに向かう。

ううん。違う。私がポケモンタワーに向かってるのはきっと自分の意志。
フジ老人のポケモンをキチンとしたお墓で眠らせなくちゃって思ったから。グリーンだって、助けたい。

よし。頑張ろう。

ギギギ…

ポケモンタワーの重たい扉を開ける。
ちょっと恐いから隣にはフッシーを出して。


『いた…』


一匹のコダックがボーッと立つ。
それから、どんどん私の周りにはポケモンが集まってきた。

っ、大丈夫、大丈夫。怖くない。怖くない。
この子たちは操られてるだけ。
震える身体を抑えながら、キッと睨みつける。


『!?わっ、』
《フシッ、》


キッと睨みつけたと同時に私とフッシーに炎が襲いかかってきた。
とっさに攻撃がきたほうを見る。
すると、そこには私の幼馴染とそのパートナーがいた。


『グリーン…、』


グリーンとリザードの目は普通じゃない。
この霧に、ゴースに操られてる。
グリーンはニヤリと笑ったかと思うと、リザードに攻撃を命令した。

それをフッシーが抑えつける。


『フッシー、ゴースを吸い込んじゃって!』
《ダーネッ!》ズゴー


そのままフッシーは背中のタネの肺活量でゴースを吸い込む。
そして、吸い込み終わったと思ったら壁に向かってそれを放った。

その姿を見届けてから、私はゴースから解放され倒れたグリーンの元に駆け寄る。


『グリーン、グリーン、』
「う、ううーん…」
『しっかりして、グリーン!』
「……ん?ナマエ、か?」
『よかった…』


目を覚ましたグリーンはまだ意識がはっきりしないようでボーッとした瞳で私を見た。

私とグリーンは幼馴染。
グリーンがシジマさんのもとに修業に行ってからも、たまに連絡をとっていた。だから私の本当の名前も知ってるし、私が女だってことも知ってる。
私がなんで男装してるかは知らないけど、グリーンはそれも黙って受け入れてくれた。
心の広い、優しい幼馴染。
唯一私を名前で呼んでくれて、私が“私”でいられる人。

…でも、レッドと違うそれが、私には不安になる。


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bkm
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