『あ、ルフィくんたち、大丈夫だった?』
「ナマエゆるい。おい、お前ら早く乗れ!船を出す!」
帰ってきた三人ににっこりと笑いながら、声をかけたら、ナミにそんなことを言われた。
ゆるい…ゆるいって…
私、お姉ちゃんなのに……
確かに外は雨がざーざーで、風もびゅーびゅー吹いてて、いかにも嵐!って感じ。そんな中、ルフィくんたちに聞いたのはゆるいかもしれないけど…
私、一応お姉ちゃん…
精神的にいうと、お母さん?
それなのに…
お姉ちゃん、悲しい…
▽
そんなこんなで嵐の中、私たちは船を出した。風はびゅーびゅー視界は良好とは言えない状態。
ちょっとだけ落ちそうになったら、ナミが私の身体を抱き締めてくれた。
……なんか、お腹くすぐったい。
「うっひゃーっ!船がひっくり返りそうだ!」
『ほんとだね。けど、メリーちゃんなら、きっと大丈夫だよ。』
「ナマエ、ゆるい。し、ネーミングセンスねぇ。」
『ナミ…反抗期?』
「あ、おい、あの光見ろよ。」
『………』
スルーされた。お姉ちゃん、スルーされた。
海に出て、というより麦わら海賊団になってから、ナミが反抗期に入った感じがする。
どうせ反抗期なら、シスコンもやめてくれればいいのにね。私の腰をがっちり掴むナミに苦笑い。
「あの光の先に“偉大なる航路”の入口がある。」
ニヤリと笑うナミに、私も微笑む。うんうん、ナミがこんなに大きくなって、お姉ちゃん嬉しいや。
そんなことを考えていると、サンジくんが樽を持ってきた。
「よっしゃ、偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやろうか!」
「お、お前なにもこんな嵐の中を…」
『ふふ、かっこいいね。』
「オイ!」
にっこり笑って言ったら、何故かウソップくんに突っ込まれた。
あれ?なんか変なこと言ったっけ?
「おれはオールブルーを見つけるために」
「おれは海賊王!!」
「おれァ大剣豪に」
「俺は世界地図を描くため」
「お…おれは勇敢なる海の戦士になるためだ!」
コトリ、コトリ、みんなが樽の上に足を置く。
最後にみんなが期待するように私を見た。
…ああ、私もこの中に入っていいんだ。
もう、私はココヤシ村のノジコじゃなくてナマエなんだ。
『…じゃあ、私はみんなの夢を見届けるために』
どうか、どうか、私に物語の最期を共にすることを許してください。
ねえ、ノジコ。私ね、今とても幸せなの。
ガコォンッ!と大きな音を立てながら、樽の蓋が開かれた。
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bkm