辛そうに顔を歪める慊人。
性悪最低男の隣には、笑顔の元宮さん。
アカン、アカンわー…、
『慊人、ちょっと来て。』
「へ?名前?」
慊人を引っ張って、私はさっきのショッピングモールに入って行く。
さっきと違うのは、私が入って行くところがメンズ服のお店だってこと。
『えーっと、コレとコレと…コレかな。あ、ブーツも欲しい。』
「名前…?何しようと…、」
『ふふ…あの慊人を一人にした奴らに見せつけようと思って!』
にーっこりと笑うと、慊人が首を傾げてて可愛かった。
でも、まぁ、私の大切な友達を一人にしたんだし、ねぇ?私の本気見せてあげるよ!
って、どこの中二病www
▽
「あ、慊人さん…?」
「なに。」
冷たい瞳で慊人は性悪最低男を見る。
それに意味が分からないとでも言うような、性悪最低男の顔にクスリと笑う。
あーあー。これで、性悪最低男が慊人への気持ち思い出してくれるといいんだけど。
私だって、嫌いなわけじゃないんだよ?戌憑きのこと。
でもさぁ、慊人の気持ち忘れて元宮さん行っちゃったのには、すっごいムカついてるんだよね。
「隣の、男は…?」
「別に紫呉には関係ない。」
『慊人ー?なに、そいつら友達なの?』
「別に。ただの親戚。」
慊人の言葉にショックを受けたような戌憑き。
ちなみに、男とは私のことである。
ダボっとした服にジーンズ。そしてシークレットブーツとウィッグを着けて、ちょっと化粧をすれば、パッと見男。
しかも、前世歌い手で培った低い声が男らしさが倍に!
元宮さんがキラキラした目で見てるけど、スルーでおーけーwwww
まあ、顔はもともといいし、男装すればイケメンだよね。私。
「あのぉ、私、元宮羽依って言います。」
『へぇ。』
私が慊人に引っ付いてると、元宮さんが来て、私に上目遣いをする。
おぇっ、なんて思ってないよ。思ってない。
私とはずいぶん、対応が違うね。
マジ、ウケるwwww
「羽依って、呼んでください。」
『無理。』
「……え?」
『だって俺、女嫌いだし。本気で無理。ないわ。』
私の言葉にプライドが刺激されたのか、顔を真っ赤にして慊人を睨みつける元宮さん。
いやいや、おかしいやん。
なんで、私じゃなくて、慊人?
『なぁ?俺の慊人見るの止めてくんねぇ?慊人ー、さっさと行こうぜ!』
「うん。」
「ちょっと待ちなさいよ!」
そう言って、私たちが二人が手を繋いで離れようとすると、後ろから女の声。
あー…めんど。
『なに。』
「そいつだって、女じゃない!なんで、あたしはダメなのよ!」
あ。この女、馬鹿だ。
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bkm