『ふわぁ…、』
思わずお嬢様にあるまじき大きなあくび。
昨日は、あのあと私も疲れてメイちゃんと一緒に寝てしまった。
この身体は弱くてたまらんですわ。
で、今朝早く起きた理由は、メイちゃんが礼拝に行くって言うからお見送りしようと思ったんだけど…
先にタミちゃんと一緒に行ってしまったらしい。ざんねん。
それにしたって眠いわぁ。
「名前様、そんな薄着では風邪を引きます。」
『あら。ありがとう、忍。』
私の肩にカーディガンをかけてくれた忍にニコリと笑ってお礼を言う。
あぁ、それにしたってこれからどうしよう。
とにかく、メイちゃんがクラスでちゃんとお友達が出来てるといいけど。
『ふわぁ…、』
とりあえず、もう一眠りしよう。うん。
*-*-*-*-*-*-*-*-*
『ん…?』
目が覚めると、目の前には可愛らしいメイちゃんの顔。
なんで?とか思ったけど、可愛いからいいと思う!
微笑ましさに笑いながら、メイちゃんの頭を撫でると、メイちゃんの目がぱっちりと開いた。
「…へ?あれ?」
『ふふふ、起こしちゃった?』
「あ、ご、ごめんなさい!」
私の言葉に大慌てで、飛び上がるメイちゃん。
あぁんっ、ほんと可愛らしいわ!
『別に一緒に寝ててもいいのよ?』
「ぅう…、恥ずかしい…」
『恥ずかしくなんてないのに。メイちゃんは可愛いわねぇ。』
ぽんっと顔を赤くするメイちゃんが可愛くてしょうがないお年頃です。
『学校でイジメとかはなかった?』
「なかったよ!…あ、でも、タオル一枚で礼拝に行っちゃった…」
『あらまぁ。大丈夫だった?』
「うん!」
ニッコニコな笑顔を見せるメイちゃんにきゅーん!
と、私はここでメイちゃんに言っておかなくちゃいけないことがあるのを忘れてた。
『あのね、メイちゃん。』
「なぁに?名前お姉ちゃん。」
『えーっと、言いづらいのだけど…、』
「これから、名前様のことをお姉ちゃんなど呼びませんように。」
私が言葉を濁しながら、ごにょごにょ言っていると、後ろから気配もなく、理人さんが近付いてきた。
あら?忍はどこにいるんだろう。
まあ、あの子のことだから、他のお嬢様と密会でもしてるんでしょうけど。
「理人さん?なんで、名前お姉ちゃんって呼んだらダメなんですか?」
そんなことを思っていると、いつもより冷たいメイちゃんの声でハッと意識を戻した。
…うん?なんでメイちゃんが、こんなに冷たい声?
「この聖ルチア女学園で、名前様は最高の地位におります。メイ様がお姉ちゃん、などと言っていたら、他のお嬢様方にメイ様の本当のお名前が公けになってしまいます。名前様のお名前はこの学園では、大きな影響力があるのです。」
『そういうことなのよ。メイちゃんの本名がバレる、ということは貴方の命がより危険になるということなのよ。私は幼少の頃から、そんな目にあってきたし、平気よ?でもね、メイちゃんは違う。それに、私はメイちゃんのご両親にメイちゃんのことを頼まれてるのよ。』
しゅんっと、犬耳が生えていたら、きっと垂れ下がっているだろうメイちゃんは、不謹慎ながら、ベリーキュートです。
「じゃあ、お姉ちゃんのこと、お姉ちゃんって呼んだらダメ…?」
『理人さん!この子すごく可愛いわ!カメラ!』
「残念ながら、そのようなもの一切ございません。」
『………』
私を見る笑顔の理人さんが恐かった。
そんなヤキモチなんて妬かなくていいのに!
『大丈夫よ、理人さん。メイちゃんは貴方のものですから。』
「「違う!/違います!」」
あれ?なんでこんなに力強く否定するの?
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bkm