女性の長い髪がそよそよと風に揺れる。
その傍らには、白に包まれた美しい青年。
「名前様、本郷メイと柴田理人が着きました。」
『よし!忍行くわよ!』
「はい。」
陰寮へいざ行かん!
女性はその妖艶な容姿とは裏腹に力強い口調でニコリと笑った。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
ガチャリと陰寮にあるメイちゃんの部屋を開ける。
『メイちゃーん!!』
「へ?」
『あら?私のことわからない?』
「え、っと、あたしの知り合いに、こ、こんな綺麗な人は、」
どもりながら、そう言うメイちゃんにクスクスと笑う。
やっぱりメイちゃんは可愛らしいわぁ。
さすが私の……姪?妹?
『今まで文通してたのに、わからないなんてお姉ちゃん悲しいわ。』
「ぁ……、名前お姉ちゃん…?」
『そうよ!可愛い私のメイちゃん!』
「お姉ちゃん!!」
ぎゅーッと私に抱き着くメイちゃんを受け止める。
ほんと、可愛いらしい子。
メイちゃんを見てると、なんというか、私が守らなくちゃ!って気持ちになるし。
『あ、忍。』
「なんでしょう?」
『理人さんとこれから仲良くね?』
「は、?」
『私、今日からここに住むから。』
ピシリと固まった忍にあら?と首を傾げる。
なんだかなぁ。
私は詩織と違うし、忍が私を好きになることはない。だから、忍が理人さんを嫌うことはないと思ったのになぁ…
あれかな。生理的に合わないのかな。
仲良くすればいいのにねぇ。
そんなことを考えていると、モゾモゾと私の腕の中のメイちゃんが動く。
「お姉ちゃんも、ここに住むんですか?!」
『ええ。だって、メイちゃんがここに住むんですもの。ずっと文通だけだった分、一緒にいたいでしょ?』
「はい!」
元気良く返事をするメイちゃんにクスリと笑う。
あ、でも一つだけ気にいらない点が。
メイちゃんの唇に人差し指を当てながら、グイッと顔を近付ける。
『ねぇ…』
「?」
『敬語なんて使っちゃダメよ?』
「っ、」
とたん、顔を真っ赤に染めるメイちゃんにあら?と頭に?を浮かべる。
私、変なこと言ったっけ?
でも、敬語は使われるイヤだし。
メイちゃんに敬語なんて使われると悲しくなるわ!
「名前様。」
『ん?どうしたの、忍。』
「ここに住むのに、この環境は名前様の身体に障ります。」
『でも、私の命令をなんでもこなすのが、忍でしょう?』
「……はい。」
なんだかんだで言うこと聞いてくれる忍は、すごくいい執事よねぇ。
いまだに顔が真っ赤なメイちゃんを抱き締めながら、クスクスと私は笑った。
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bkm