迷走中。 4


『どーもー。今日からホスト部に入る藤岡名前ですー。よろしくお願いしまーす。』


私を見て口をあんぐりと開ける彼らにクスリと笑みを零した。
それは心からの笑みではなかったけど。


『あ、自分、ホスト部と仲良くなるつもりはないんでー。よろしくはしないでいいんでしたー。』


てへ、と笑ったら、衝撃的な顔をしていたホスト部が、なんだか面白かった。

挨拶が終わって、音楽室から出ようとすると、鳳鏡夜に肩を掴まれる。


「名前。お前、もうちょっとオブラートに包むとかできないのか。」
『先輩…、十分、オブラートでしたよー?あ、てゆか、自分のこと名前で呼ぶのはやめてくださいねー。』


にっこりと笑顔を張り付けて言うと、これまたにっこりと鳳鏡夜は笑みを作った。


「断る。」


チッ、腹黒が。

イラッときたけど、顔に出すのはやめておいた。


明日から私はホスト部として活動するらしいんだけど。

やっぱりめんどーだなー。

眼鏡を外して空を見上げる。
あぁ、やっぱり屋上から見える景色は綺麗。

ボヤける視界が心地よい。

ツーッと、瞳から流れる涙には気が付かないフリをした。


須王Side

「皆の衆!俺は天使を見た!!」


腰に手を当て、声高々に言う。
すると、皆はこっちをチラリと見たあと、各々に好きなことをし始めた。


「…………」
「たまちゃん、天使ってなにー?」
「おお!ハニー先輩!興味を持ってくれたのは貴方だけです!」


ぶんぶんと、ハニー先輩の手をギュッと握って振る。


「本当に天使だったんですよ!」


あの時のことを思い出す。
天使を見たときのこと。


あの日は、珍しく屋上に一人でいた俺は、とくにすることもなく、空を見ていた。

そう、そのとき。
屋上の扉が開いて、俺は慌てて隠れた。


「なんで隠れたのー?」
「意味わかんなーい。」
「特に意味はない!」
「「うざ。」」


ごほん!
で、少し時間が経ち、そーっと覗いたところに天使がいた。

短い髪で、綺麗な瞳をした女の子。
その両の瞳からは、透明な雫を流していた。


「「それでどーしたの?」」
「美しく、心臓がバクバクとして、逃げてしまった…」
「「うわぁ、ヘタレ。」」


それを言われると、グサリと心に突き刺さる。

うぅ…だが!

「俺は彼女を探してみせるぞ!」
「たまちゃん、頑張ってね!」


そして、あの子の涙を拭いてあげるのだ!
心にそう誓った。



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bkm
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