もしも、この世に必然なんてものがあるなら、それは間違いなく私という存在ではなくハルヒという存在に対しての必然だろう。
だって私はしょせんハルヒの代わりでしかないから。
なんでそんなことを考えてるか。
それは三週間ほど前に遡る。
ただ昼寝をしている時だった。
「あれ〜?」
『!』
その声に驚いて寝るために外していた眼鏡をすぐさまかける。
寝起きで定まらない視界を声の主に標準をあわせれば、そこにいたのは私が関わらないと決めた一人。
あー…めんどくさぁ…
この前も寝てて、気配がして起きたらホスト部の一人がいたんだよねー。
なんなのこのホスト部のエンカウント率。
あーほんと無理だわー。
「こんなところに人がいるなんて珍しいねぇ〜」
『………』
しかも、ホスト部の食わせ者。
私、ホスト部の裏ボスは鳳鏡夜だと思ってるけど、それを凌ぐ食わせ者は埴之塚光邦だと思ってる。
だって、勘がいいしね。
めんどくさいのに会っちゃったなー。
「ねぇ、なんでここにいるの〜?」
『……』
「あ!別にダメって言ってるんじゃないんだよ?ただ気になっただけ〜」
聞いてないのに、ペラペラと話す埴之塚光邦をスルーして、私はさっさとこの場をあとにしようと立ち上がる。
「あれ?もう行っちゃうの〜?お話しない?」
『……はぁ。すみませんが、自分は知らない人と話すほど暇ではないのでー。さよーならー。』
そう一言残すと、私はまた新しいサボり場を探さなくちゃ、と思いながら、その場から離れた。
後ろで、埴之塚光邦が至極楽しそうに、そう言うなれば新しいオモチャを見つけたかのように目を輝かせていたことは知らない。
「女の子みたいで、僕たちのこと知らない人なんて面白そう!」
ましてや、これから私がホスト部に巻き込まれるなんて。
このときの私は知るはずもなかった。
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bkm