由希Side
ご飯を食べながらなんでこんな姿になるのか、記憶が消されてしまうかもしれないってこと全部話した。
そしたら、名前も自分のことを詳しく話してくれた。学校では花島さんと魚谷さん以外には敬語を使うこと、母親が意識不明で入院していること全部。
「ごめん、気持ち悪いよね。」
『うーうん!私は、そんな由希くんすごぉく可愛いと思うよ!それに、私も結構猫被ってるしねww』
「でも根本的なところは一緒だと思う。学校の名前も、今の名前も。」
本当に思ったことを口に出す。
名前は学校でもだけど、今もすごく優しい。本当に根本的なところは一緒なんだから別にいいと思う。
椅子に座ってお茶を飲みながら、そうこぼせば、名前は目をパチクリとさせてから俺のところに来たかと思うも、ぎゅうぎゅうと俺をその豊満な胸に押し付けた。
その拍子にポンッと子姿になる俺。
『んーっ!由希くんありがと!』
「え?」
『やっぱり由希くん信じてみて正解!』
ニコニコと笑っているはずなのに、震える声でそう言う名前に、なんにも言えなくなった。
で、現在。
『あは、由希くんかーわい!』
「………名前?」
だいぶ学校とは性格の違う彼女は可愛いものが好きらしい。
でも、だからって、
『子姿のお洋服作ってよかったー!』
「可愛いけど…っ!」
すごくいい笑顔で笑う名前はすごく可愛い。でも、これはなんか違う気がする…
てか、器用だよね。すぐに俺用の服つくるなんて。
ちょっとだけ感心していると、名前はポンっと何かを思い出したように手を打った。
『あ、明日はちょうど休みだから由希くんの家?ってか当主の人にちゃぁんとあいさつしに行くね!』
「え…?本当に俺が住んでもいいの?」
『うん!お父さんにも電話して聞いたらいいって言ってたから大丈夫だよ!』
学校ではあまり見ない名前の本当の笑顔に身体を熱くさせながら、頭の中では彼女が慊人になにかされたらと思って不安になる。
それにしても、絶対に名前は俺のこと男だと思ってない…っ!普通は男と住むとか言わないでしょ…
でも、実際彼女の言葉はすごく助かった。
何年月か前に急に現れた元宮という女は草摩家の、特に十二支にすごく好かれた。
慊人だけは気に入らないようだったけど、楝さんに利用価値があると見出された元宮さんは草摩家にそうして取り入った。
で、あのバカ猫が家に来たと思ったら元宮さんまで家に住むことになった。
紫呉に文句言っても聞かないし…
だから家出なんて勢いでだけの行動だったけど名前に拾われて本当によかったと思う。
それにこのままここに住めれば、もっと名前との距離も縮まるし。
うん。一石二鳥。
『あ、もうこんな時間だぁ。由希くんどこで寝る?子姿のまま私の部屋で寝る?そうする?』
「…………」
とりあえず、彼女に俺が男って認識してもらわないと駄目な気がする。
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bkm