貴方に価値はありますか? 12


春も過ぎて、梅雨の時期。
梅雨は湿っぽいから嫌いだ。

黄瀬とか黒子の扱いも慣れてきた。
慣れたくなかったけど。不本意だけど。

そういえば、そろそろ剣道の大きな大会があるらしい。そこで三年は引退。
まあ、剣道部の三年っていっても関わること少なかったけど。つか、三年は幽霊部員だったけど。
おかげで私は部室でサボれるからいいんだけどね。


「そういえば、俺らのクラスに転入生来たの知ってるスか?」
『……転入生?』


今日も今日とて、部室でサボってると黄瀬が来た。
そういえば、黒子もよく来るけど、この二人が同じ時間帯に来たことはないな。

……どんな偶然だ。


『他のクラスにも転入生来たって聞いたけど…』


このまえ、黒子も同じセリフを言ってた気がして、黄瀬にいうと、黄瀬は目を丸くして私を見た。


「あれ?よく知ってるスね。さすが名前っち!」
『……その呼び名、どうにかならない?』
「ならないっス!」


そんなキラキラ笑顔で言われても。
私の言葉にとても素晴らしい笑顔を向けてきた黄瀬に引く。


「俺らのクラスに来たのは女ッスよ!慣れ慣れしくて、ウザいっス!」
『………』


私は突っ込まない。
シャイニングスマイルで、毒を吐いてる黄瀬には突っ込まないぞ。

……黄瀬って、ただのワンコだと思ったら、腹黒ワンコだったのか…

知りたくもない事実が私の中にインプットされた。


『そういえば…全然教室行ってないなぁ…』
「16日来てないッスよ。」
『何故正確に覚えてる。』
「名前っちのことだからッス!」


やだ、また子を相手してる気分になる。
お前ら二人とも恐い。

そのうち襲われたりしたら、どうしよう。
……いや、ないな。

一瞬浮かんだ恐ろしい考えは一蹴した。


『んー…来週の月曜には行こっかな。』


ちなみに今日は金曜日。


「えぇー。なんで今日は来ないんスかー?」
『……もう、五時間目に突入しそうなこの時間に行けと?』
「はい!」
『行くか、馬鹿。』


そんな時間に行ったら絶対浮く。
ない。ありえないな。

ぶーぶー文句を言ってる黄瀬の頭を一発殴って黙らせる。

なんだかんだで、この生活にも慣れ始めた。
二ヶ月近くも、ここにいたら慣れるわ。そりゃあ。
でも、きっとそれだけじゃない。
黄瀬と黒子が、一匹狼突入な私をグイグイ引っ張ってきてくれたからだと思う。
そこは、少し感謝してる。


「名前っち、冷たいッスよー…」
『はいはい。教室早く戻れ。』
「ちぇー」


……絶対に、言ってやったりしないけど。


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