貴方に価値はありますか? 11


「あ、あの、」
『なんだ?』
「と、友達になってくれませんか?」


どうしてそうなった。

影薄い少年が泣き終わるまで付き合った私。
だって、その場で逃げたらさすがに酷いかなって思ったんだよ…
というより、ここ以外行く場所なかった。


『悪いけど、私は…、』
「僕、黒子テツヤって言います。」
『あ?あぁ、私は高杉名前。いや、それより私は…、』
「名前さんですね。よろしくお願いします。」
『いや、だから、私は君と友達に…』
「僕、ずっと友達がいなかったんです。」
『………』


私の話を聞く気がないということがわかった。
いや、それより友達いないって…

この状態で友達にならないって言える人に会ってみたいな。私は言えない。

結局、私はこの黒子……ん?黒子?


『……、』
「なんですか?」


私のいる世界は黒子のバスケ。
こいつの名前は黒子。

……こいつか。
この世界の主人公。

じゃあ、私は主人公と同じ学校に来たってことだよね。なら、さつきはいないな。
確か私の記憶だと、さつきは違う学校だった気がする。


「名前さん…?僕の顔になにかついてますか?」
『…いや。なんでもない。それより、お前は授業に戻れ。私は寝る。』
「別に…僕がいてもいなくても、教師は気付きません。」


……存在感ないくせに、よく主人公できたな。


なんて、思っちゃうのは、前の世界での主人公が存在感ありまくりだったせいかな。
懐かしい銀髪を思い出して、なんだか切なくなった。


『とりあえず、黒子は戻れ。ハウス。』
「僕と一緒がイヤですか…、?」


うるうると潤んだ瞳で私を見る黒子。

うん。無理。無理だよ。
なんかいろいろ無理です。
助けて松陽先生。

ちょっとだけ、性格が松陽先生といた時に戻りそうだったので、ゴホンと一つ咳払いをする。


『別に、イヤじゃない。でも、お前は学生だ。戻れ。』
「名前さんは…?」
『私は頭がいいからいいんだ。』


教科書を読めば大抵のことは分かるし。

とりあえず、一人になって、私は寝たい。


「また、ここに来てもいいですか?」
『勝手にしろ。とりあえず、授業に戻れ。』


くぁ、とあくびをしながら、私は更衣室(という名の、私専用に改造された部室)へと戻っていった。

あぁ、眠い。


懐かしい、夢を見た。
私がいて、松陽先生がいて、銀時がいて、小太郎もいる。

ただ一つ違うところ。
それは、晋介もいるところ。

謝っても謝りきれない、私が奪ってしまった彼がいたら、世界はもっと輝いていたかもしれない。

血に染まった自分の手を見て、自嘲気味に嗤った。


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bkm
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