貴方に価値はありますか? 10


「名前っちー!一緒にお弁当食べるッス!」


黄瀬の私のモノになる宣言から一ヶ月。
いろいろ私も諦めた。

だって、こいつ私のいる場所いる場所に現れんだもん。黄瀬のしつこさはストーカー並みだった。


『……はぁ。』
「なんでため息ついてるんスか?」
『黄瀬、とりあえず私を抱きしめるのを止めろ。』
「涼太ッス!」


こいつ、本当に話聞かない。

また子と辰馬を合わせたようなこいつの性格に、私はもう疲れた。

たまに、黄瀬に尻尾が見える自分にそうとう疲れてるな、と実感する。


いろいろ疲れたので、黄瀬にはうまいこと言って、一人で剣道場でゴロンと横になる。

本当はタバコを吸いたい。けど未成年なので我慢。
犯罪者だけど、犯罪には厳しいって…
私はそれでいいんだろうか、と思ったけど、まあ、しょうがない。だって、先生が喫煙は大人になってから言ってたし。


ウトウトとしていると、気配を感じた。
すぐそばにあった木刀を持って、立ち上がる。

ここは不良の溜まり場にもなってるから、ちょっと厄介なんだよね。ちなみに今まで、ここに来たバカは木刀で全員しずめた。


『誰だ。』
「………?」


そこにいたのは、すごく影の薄いガキ。
私よりも背が小さい。

自分が話しかけられたことに不思議そうに首を傾げる。それどころか、キョロキョロと辺りを見始めた。


『おまえだ。そこのお前。』
「僕ですか…?」
『そう。おまえ。』


私が普通に、普通に答えると、何故かその男の子がボロボロと泣き始めた。

……いやいやいや、私は普通に話しかけただけだぞ?何故泣く?


「ぼ、僕のことが分かるんですか…?」
『は?いや、普通に分かるだろ。』


え、もしかしてこいつ幽霊とか、そんなノリなの?

そんなんなら、ちょっと、いや、すごく遠慮したいんだが。

………怖いのが苦手でなにが悪い。


「…ひっく、……、」
『………』


とりあえず、ここから逃げ出したいな。


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bkm
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