「名前っちー!一緒にお弁当食べるッス!」
黄瀬の私のモノになる宣言から一ヶ月。
いろいろ私も諦めた。
だって、こいつ私のいる場所いる場所に現れんだもん。黄瀬のしつこさはストーカー並みだった。
『……はぁ。』
「なんでため息ついてるんスか?」
『黄瀬、とりあえず私を抱きしめるのを止めろ。』
「涼太ッス!」
こいつ、本当に話聞かない。
また子と辰馬を合わせたようなこいつの性格に、私はもう疲れた。
たまに、黄瀬に尻尾が見える自分にそうとう疲れてるな、と実感する。
いろいろ疲れたので、黄瀬にはうまいこと言って、一人で剣道場でゴロンと横になる。
本当はタバコを吸いたい。けど未成年なので我慢。
犯罪者だけど、犯罪には厳しいって…
私はそれでいいんだろうか、と思ったけど、まあ、しょうがない。だって、先生が喫煙は大人になってから言ってたし。
ウトウトとしていると、気配を感じた。
すぐそばにあった木刀を持って、立ち上がる。
ここは不良の溜まり場にもなってるから、ちょっと厄介なんだよね。ちなみに今まで、ここに来たバカは木刀で全員しずめた。
『誰だ。』
「………?」
そこにいたのは、すごく影の薄いガキ。
私よりも背が小さい。
自分が話しかけられたことに不思議そうに首を傾げる。それどころか、キョロキョロと辺りを見始めた。
『おまえだ。そこのお前。』
「僕ですか…?」
『そう。おまえ。』
私が普通に、普通に答えると、何故かその男の子がボロボロと泣き始めた。
……いやいやいや、私は普通に話しかけただけだぞ?何故泣く?
「ぼ、僕のことが分かるんですか…?」
『は?いや、普通に分かるだろ。』
え、もしかしてこいつ幽霊とか、そんなノリなの?
そんなんなら、ちょっと、いや、すごく遠慮したいんだが。
………怖いのが苦手でなにが悪い。
「…ひっく、……、」
『………』
とりあえず、ここから逃げ出したいな。
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bkm