貴方に価値はありますか? 9


次の日。

私は昨日黄瀬と別れたあと、素晴らしいサボりを見つけた。

そこはすごいボロボロな剣道場だったが、私にとったら先生に教わった剣道場を思い出して、すごく落ち着く。

しかも、剣道部は廃部寸前らしく、今年引退する三年が二人だけらしい。しかも弱小。で、その剣道部が廃部すると剣道場は壊すらしい。

結果。

私が剣道部に入部することにした。
さいわい、私以外剣道部に入る一年はいないらしい。
とりあえず、大会に出てればいいらしく、練習は適当にすればいいと言われた。
最高の条件である。


それが昨日決まって、私は若干浮き足立っていた。
ようするに、気が緩んでいたのである。


「名前っちー!!」
『??!!!』


教室で音楽を聞いていると、後ろからガバァと抱きつかれた。

ちなみにいつもなら、こいつの気配くらいすぐにわかる。これでも、戦争を経験済みなんだから。

でも、先ほど言った通り私は気が緩んでいたのである。

よって、簡単に彼の腕の中。

しかも、名前呼び+っちってなに?
あれ?おかしくない?


『な、にすんの!』


力を込めて黄瀬の腕を引っぺがす。
それから、後ろにいる黄瀬を思いっきり睨みつけた。


「なんで剥がすんスか〜?」
『それはこっちのセリフだ!』
「お、おい、黄瀬、お前なにしてんだよ?」


一人のクラスメイトが黄瀬を止めようと、私と黄瀬のところに来る。

きっとこのクラスメイトは他のクラスメイトたちに押し付けられたんだろう。
みんながこちらに注目している。

最悪だ。


「なにってなんスか?」
「な、なにって、お前…、」
「俺、決めたんス。」
「…?」
「今日から名前っちのモノになるって。だから……邪魔しないでくださいね?」


この時の黄瀬くんには、周りに有無を言わせない強い何かがありました。BY クラスメイト


『いや、間に合ってるからいらないし。』
「そんな遠慮しないで欲しいッス!」
『遠慮じゃねぇよ。心からそう思ってんだよ。』
「名前っち可愛いッス!」
『……あれ?話が通じない。』


クラスメイトの思ってることなど、つゆ知らず。私は黄瀬の話の通じなさにデジャヴを覚えていた。

この話の通じなさは辰馬を思い出す。
てかモロ辰馬。
そして、この私のモノになる宣言。どう考えてもまた子。
やっぱりお前らアレだろ。親戚か何かだろ。


「名前っちーっ!」
『……………なんで私なんだ…』
「?だって名前っちが言ったんスよ?深く狭くな友達を作れって!」

だから名前っちのモノになるんス!

晴れ晴れしい笑顔で、私にそう言う黄瀬に、昨日の私を殺してやりたいと殺気が湧いたのは言うまでもない。

てか、黄瀬の答え曲解すぎだろ。
もっと私以外のやつで友達と作るとかあっただろ。

なんて思っても後の祭りで、私はこれから毎日黄瀬につきまとわれる。

あぁ、さっさと鬼兵隊に帰りたい……


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bkm
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