「私を助けてはいけません。」
これが先生の言った、最期の言葉だった。
なんで、どうして、
私は声が枯れるくらいに叫んで、手を伸ばした。
私を助けてくれたのは先生で、私が私として生きるようになったきっかけも先生で、私にすべてを教えてくれたのも先生だった。
私の世界から先生がいなくなったらどうなるの?
どうやって生きればいいの?
私に死ねとおっしゃるのですか先生。
先生と過ごした家に引きこもってずっと泣いてた。
ある日、一枚の手紙を見つけた。
先生からだった。
震えながら、その手紙を開ける。
「名前へ
もしも、貴方がこの手紙を読んでいるなら、私は死んだのでしょう。
私は死ぬことに恐怖はありません。
きっと、私が死なねばこの戦争は終わらなかったでしょうから。
でもね、名前。私は貴方が心配です。
貴方は昔から、私の後ばかりくっ付いていましたから。
銀時も小太郎も、きっと私がいなくても生きられるし、自分の道を切り開くでしょう。
しかし、名前。貴方にはそれができていますか?
それがただ心配です。
私はね、幸せでした。
可愛い教え子に恵まれ、慕われた。
だから、貴方にも幸せになってもらいたいのです。
名前。幸せになりなさい。
それが私からの願いです。
それから…民の幸せを。
天人なんかに負けないでください。
自分の道を自分で切り開いてください。
貴方は高杉晋助ではなく、高杉名前なのだ、ということを忘れないでください。
吉田松陽」
ボロボロと枯れたはずの涙がまた零れる。
先生は、最期まで私を私として見てくれてた。
先生先生、大好き。大好きだったよ。
ボロボロと泣き続けていると、バァァアンン!!と扉の壊れる音。
それに驚きつつ、涙を流しながら扉を見る。
そこには私の盟友の姿。
「「「名前!!」」」
『ぎんとき…、こたろ、たつまも……、』
三人の姿をそのままボーッと見ていると、ズンズンと近付いてきた銀時に殺されるんじゃないか、ってくらい強く抱き締められる。
「お前っ…心配しただろうが!!」
『っ…!ご、ごめ、』
「死ぬかとおもった…、」
その銀時の言葉に苦しさも忘れてまた涙が零れる。
「まったく…お前は昔から暴走しすぎるところがあったからな。」
「ワシは心配してなかったぞ!名前は昔からやればできる子じゃけぇ。」
グシャリと二人に頭を撫でられる。
ずっと先生だけを見て、先生の後をくっ付いていたから、気づかなかったのかもしれない、
私には、先生だけじゃなかった。
ずっと私のそばには銀時も、小太郎も辰馬もいて、
私は心配ばかりかけていたのかもしれない。
涙が止まったはずの瞳から、またボロボロと涙が零れる。
『…っ、ぅうわぁぁぁぁあああんんんっ!!!!』
「俺の胸で泣け。」
「ワシの胸でもええぞ!銀時なんかより優しくしちょる!」
「そんなに泣くな。」
先生先生。
私、きっとみんながいれば幸せだと思う。
だからこの幸せを守るために、私は頑張るよ。
晋助みたくテロリストになったって、私は私のままでみんなを護るから。
頑張るから応援してて。
先生のことも、ずっとずっと忘れないよ。
ずっとありがとうございました。
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bkm