救いになりました。


私の君主、謙信様。
謙信様は堕ちていってしまわれた。
それは佐助の主も同じで、
一人の小娘に私たちの関係は壊された。

痛む体で佐助と逃げる。
追いかけるのはかつての同僚。
殺して傷付けられ、
もうダメだ、と思った時に山へ逃げ込んだ
その山は物の怪が出ると有名で、誰も近寄らない恐れられている山。

私たちはそこに逃げ込んだはいいが、そのまま意識を失ってしまった。

死を、覚悟した。
ズキンと身体が痛んで、痛みで目が覚める

知らない天井、知らない部屋、
ここは一体どこだ。

身体が痛くて動かないので寝たまま頭だけで辺りを見渡す。すると、何処からか人が近付いてくる気配。

敵か…!

そう思い殺気を出すと、襖を開けたのはまだ幼い子どもだった。


『あ、起きた。』


高い凛とした声が辺りに響く。
一瞬警戒を忘れてしまうほど、この子どもの声は美しかった。

声に聞き惚れていると、すでに子どもは私の目の前にいた。


『?どうかしましたか?まだ傷が痛みますか?それともお腹空きましたか?』
「ぁ…、」
『傷痛むなら痛み止め飲みますか?』
「お、お前は何者だ!」


子どもとは言え見ず知らずのやつの声に聞き惚れるなど忍者失格だ…!
そう思い、子どもに強い口調で問いただす

すると子どもは無表情のまま口を動かした


『私は要です。親にここに捨てられてから五年間ここに住んでます。お姉さんたちのことは三日前に拾いました。』
「あ、あぁ。」


思わずこちらが驚くほど、はっきりと自分のことを告げた。
いや、捨てられたとか言ってなかったか?
それは人に言っていいものなのか?

そんなことを考えていると、グーと子どものお腹が鳴る。それに子どもは目を細めると部屋から出て行ってしまった。

なんだったんだ。一体。
それにしても、私は何故生きてる?
あの時に死んだはずでは…?

小娘に狂わされた謙信様と甲斐の虎たちは、小娘を否定した私と佐助を攻撃した。
それから私たちは自分の同僚に追われ、死んだのではなかったのか、?

何故生きている…、?

そこまで考えるとガラリと襖があいた。


『ご飯です。おにぎりです。』
「お前は、私を助けたのか、?」
『…?どっちかと言うと拾いました。』


握り飯を持ってくるために部屋を出た子どもは、無表情のまま私に握り飯を食べさせようと私を少し持ち上げるとそれを口に差し出してきた。

…本来なら、他人からもらったものは食べない。それが忍だから。
だが、私は一度死んだ。
愛する君主に裏切られ、

ならば、この娘といるのも悪くないのかもしれない。

パクリ、娘の握り飯を食べながらそんなことを考えた。

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