救世主ですか?


私の前に出来た三つの影にさっきまでバクバクしてた心が、一定のリズムを取り戻す。


「な……!」
「ごめんねー。旦那。俺様の姫さんがお世話になったねー。」
「おい。要を取り戻したら、さっさと帰るぞ。」
「(要、大丈夫?)」


小太郎さんに抱き上げられる。
それにすごくすごく心があったかくなって、ギュッと小太郎さんの首に手を回した。


「あ!風魔ズルい!」
「私の要が…!」
『あとで、二人にもギュッてしていい…?』

「ちょ、俺様の姫さん、可愛すぎる。」
「同感だ。」


小太郎さんに抱き上げられながら、二人にそう言うと、特に返事もなくそう返された。きっと、ギュッてしてもいいってことだと思うから、あとでする。


「佐助ェ!その子どもとどういう関係だ!!」
「うるさいなァ。旦那には関係ないでしょ。俺様、もうあんたらとなんにも関係ないしね。」

「かすが、そのこどもは なんなのですか。それは、てんにょさまを けがさせたのですよ。わたくしたちに おわたしなさい。」
「……貴方様は、本当にそうお思いなのですか?」
「なんのことです?いいから、わたしなさい。」


ビリビリとした空気が流れる。
帰りたい。早く帰りたい。

モロとプーさんたちにも逢いたい。


『もう、帰りたい…』
「ん。りょーかい。」


佐助さんが私の頭をグリグリと撫でる。


「とゆーわけで、俺様たち帰るねー。」
「逃がすか!!」


赤い人がそう言うと、赤い人の持っていた槍に炎が纏って、佐助さんに近付く。

あ。佐助さん、危ない。

そう思った瞬間、私は自分の手から、今まで使ったことのないほどの炎を噴き出していた。


「「「「「!!」」」」」
「要!」「要ちゃん!」


槍の炎が、私の手から出た炎と相対して小さな衝撃を起こす。

身体に風がきたと思ったら、その爆風に興じて、私たちは城の外にいた。

夜風が髪を揺らす。
今日は満月だったらしく、月の光が私たちを照らした。


『ぁりがと、ござま、す…』


へにゃり、口角が緩む。


「「「!!!」」」


ふわふわと揺れる意識の中、小太郎さんの腕に抱かれながら、あの日の夢が正夢になりますよーにって願った。


「要ちゃん、?」
「要…?どうしたんだ?」
「(………寝てる。)」


感情が分かりませんでした。
感情がわからない私は一人でした。
私は一回死んで、生まれ変わりました。
それから捨てられました。

けど、もう私は一人じゃありません。
私には感情を教えてくれる人がいます。

“寂しい”も“哀しい”も“楽しい”も“幸せ”も。
彼らが教えてくれました。

私はちゃんとこの世に“生きて”います。

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -