お姫様奪還と行きますか。


「要が帰ってこない。」


日が暮れて、夜が来た。
夕飯を作っていると言われたかすがの言葉に、しゃもじを落としてかすがを見る。


「…どーゆーこと?」
「あいつ、また外に出ていったみたいなんだ。いつも要といる狼たちも戻ってきていない。」


いつも要ちゃんといる狼、この山の主のことだろう。
要ちゃんは気付いてないみたいだけど、あの大きさで普通の狼はありえない。


「でも、あの狼たちが要ちゃんを一人で何処かに行かせるとは思えないけど。」


俺がかすがにそう話した瞬間、強い風が舞い込んできた。
それに一瞬だけ目を瞑ると、いつの間にか風魔とあの狼がそこに立っていた。


「(要、武田にいる。)」
「「…はあ?」」


なんか、俺様ついてけない。





風魔の話をきいて、頭が痛くなる。


「伊達政宗がか…」
「あー…要ちゃん、一人にさせるんじゃなかった…」


うん。やっぱり要ちゃんを一人にさせるんじゃなかった。

風魔があの狼を撫でてる横で、かすがとため息をつく。


「また、俺様があの城に行くなんてねぇ」
「要のためならしょうがない。」
「そりゃ、当たり前でしょ。俺様たちのものだからね。」


ただ一人。俺様たちのお姫さま。

精神的にも、身体的にも、ボロボロだった俺たちを救ってくれた要ちゃん。

彼女だけ、彼女だけを主君として生きることを決めた。


でも、俺様たち、信じてたんだよ。
旦那たちは違うって。

残念だよ。

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