生かせてくれた貴女に感謝を
風魔小太郎。
それは自分の本当の名じゃなく、襲名したもの。
本当の名はとうの昔になくした。
風魔小太郎が負けるということは、死を意味していた。
だから、自分も死ぬのだと。
あの日、覚悟した。
しかし、死ななかった。
幼い無垢の少女の手が自分の額に当てられる。
冷たくて、気持ちがいい。
それはまるで、赤子の頃しか知らない母親のようでもあり、ひどく自分を落ち着かせるものだった。
少女、要は無だった。
表情も、感情も。
まるで、忍の訓練を受けたかのように。
しかし、要は忍なんかではなく、ただもとから感情が備わっていないだけのようだった。
少女というには、知識、ふるまい、口調なんかは大人っぽく、その姿に庇護欲を突き立てられる。
まだまだ幼さの残る少女。
だから、自分が護らねば。
ほっといたら、死んでしまうような少女。
まるで、ウサギのようだと。
彼は認識する。