ボロボロだった。
心も、身体も、私の自尊心も。
行為が始まったころは茜色だった空は、もうすでに黒く染まっていた。
ポロリと涙が一筋流れる。
沖田が私の髪を一房とって、満足気に愛おしそうに、慈しむように、口付けを落とす。
それを振り払う気力すら起こらない。
茫然と天井を仰ぎ見る。
頭にあるのは愛おしいあの子のことだけで、
私が、男だったら、
それだったら、よかった
「また、千鶴ちゃんのこと考えてるの?」
ピタリと沖田の行動が止んだ。
この男から、愛しのあの子の名前が出るのがイヤで、
思いっきり男を睨みつける。
「女なのに、女を好きだなんて気持ち悪い。」
『っ、』
「それに僕は君が好きだから、千鶴ちゃんが大変な目にあっちゃうかもね。」
『!』
にっこりと笑みを深める沖田の瞳は、真剣味を帯びていて、
本気だ、と。
この男は、私が自分に靡かないのであれば、千鶴をどうしようがどうでもいいと思ってる。
『や、めろ、』
「とりあえず、君の行動しだいかな。ねぇ、鈴之助くん。ちゃんと、僕に名前を教えてくれるよね。」
名前。
私の名前は、千鶴だけが呼んでいい特別なもので、
「……分かってるよね?」
『っ、鈴……だ、』
「そう。じゃあ鈴。君は今日から僕のモノだよ。」
あぁ、ごめんなさい。千鶴。
私は貴女を裏切ってしまった。
私が女だから。男であれば、
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい千鶴。
愛してる。