『貴様…私を馬鹿にしているのか?』
そう私が低く言っても、沖田はケラケラと笑うだけ。
その笑い声が癇に障る。
「僕が鈴之助くんを馬鹿にしたことなんて一回もないよ?」
『っ、なら、先ほどのことはどういうことだ。悪いが、私は千鶴がすき…っ』
「うるさい。」
千鶴が好き、そう言って帰ろうとしたとたんに、沖田に首を絞められる。
ギリギリと力を込められたまま、沖田と私の唇が重なりそうになる。
『ぃやだ…っ』
「っ…、」
首を振って沖田から遠ざかれば、沖田は気に入らないとでも、言うように私の首を思いっきり噛んだ。
『ぅあっ、』
息が苦しくて、うっすらと瞳に膜が張る。
視界もぼやけるし、最悪だ。
『っ、はぁっ』
「鈴之助くん、それでも男のつもりなの?」
『…!』
首から沖田の手が離され息を大きく吸い込んだ瞬間に、耳元で囁かれた言葉。
その言葉に私はなにも言えず、ただただこの男が恐ろしくて、
逃げてしまった。
「あはは、逃げたら駄目じゃない。鈴之助くん。自分は女だって言ってるものだよ?」
クスクスと、あの耳障りな声であの男が笑っていたことを、私は知らない。