一ヶ月 | ナノ


▽ 貴女は最高の王子様


『ん…』


ボーッとする頭でキョロキョロと辺りを見渡す。
ツンとする薬品独特の匂いと白い天井。

あぁ、ここは医務室か。


「ミス ナギニ?目が覚めたのですか?」
『マダム ポンフリー……』
「心配したんですよ!貴女、三日間も目覚めないんですもの!」


三日間。
その言葉にガツンと鈍器で殴られた気がした。
私はリドルとアイリーンの時間を三日間も無駄にしちゃったんだ。


「貴女…身体は大丈夫なの…?」
『もう大丈夫よ。心配しないで。』
「いえっ、そのこともなんだけど…」


マダムの言葉にあっちか、と苦笑いする。

アリシアの身体はボロボロだ。
度重なる虐待に、労働。それがアリシアの身体を徐々に蝕んでいった。
そのせいで一ヶ月しか生きられないわけなのだがアリシアは別にそれに対して恨み言を言うつもりはなかった。
私を魔法使いだと知ってなお、私を引き取ってくれたマグルのおじさん。
そんなおじさんにアリシアは恨み言なんか言えるわけがなかった。

ただし、そのおじさんがアリシアを引き取った理由には、アリシアの容姿とその従順な性格があったのだが。


『そういえば、私、なんでここに…?』


私の記憶が正しければ、私はリドルを好きな女の子たちにリンチされて気絶したはずだ。
彼女たちが私を医務室に運んでくれるとは到底思えない。

じゃあ、なんで?


「あぁ、貴女のことはリドルが連れてきたのですよ。」
『…リドルが?』
「えぇ、」


リドル?リドルが本当に?
不思議になって首を傾げていると、私の大好きな声が聞こえた。


「マダム ポンフリー、アリシアの様子は…」
『リドル…?』


マダムの言ってたことは本当だったんだ!
そう思ったら嬉しくて嬉しくて、私は軋む身体にムチ打つとリドルに抱きついた。


『リドル、すき、すきよ。だいすき。』
「ちょ、アリシア?」
『世界で一番愛してるわ!ありがとう!』
「っ、」


ぎゅっとリドルの温もりを感じて私は幸せだった。

リドル、リドル。愛してる、愛してるの。
この気持ちは永遠に変わらないわ。



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