▽ 自分の気持ちがわからないんだ
「トムはみんなのモノなのよ!貴女だけのモノじゃないの!」
分かってる。
「どうせ貴女なんて愛していなのいのよ!」
知ってる。
「どうせ貴女はトムの暇潰しの玩具よ!」
きっとそうだわ。
「トムと別れなさいよ!」
それは…
『イヤよ。』
「「「「 !! 」」」」
アリシアの周りを取り囲むようにして嘲笑っていた女の子はアリシアが言葉を発したことに、一瞬だけ驚くとすぐにアリシアをギロリと睨みつけた。
「〜〜〜!っ、貴女!生意気なのよ!今までトムのことなんて知りません、気にしてませんってすましてたくせに!今さら出てきて、私たちのトムと付き合うだなんて!」
「そうよ!私だってトムのことが好きだったのに…!」
そう言いながら薄っすらと瞳に透明な膜を張る彼女たちはとても綺麗だと思った。
でも、私はリドルのモノだから。
この居場所だけは誰にも譲りたくないの。
『私は、リドルのモノ。貴女たちにどう言われても、私はリドルが好き。』
「っ、ムカつくのよ!」
バシンッ
そんな音がした。
ジワジワと熱を帯びていくアリシアの頬。
それがきっかけのように、周りにいた女子はアリシアに自分の想いの丈を思い思いにぶつけた。
「ずっと、見てたのにっ!」
ガツンッ
「こんなに好きなのに…!」
バシンッ
それはアリシアが崩れ落ちても終わらない。
『っ、』
「貴女なんて…!死ねばいいのよ…!!」
ゴリュッ
変な音がしたな、と思った時にはアリシアの意識は真っ暗な闇に落ちていった。
「アリシアっ!」
だから、アリシアは知らない。
リドルが怒りで真っ赤に震えていたことを。
アリシアが僕を好きだとか言う奴らからいじめられるのは分かってた。
演技をしている、トム・リドルはみんなの人気者だから。
もちろん女からも人気だ。
でも、僕はアリシアのために何かしようなんて思わなかった。
だから、偶然だった。
ただの通りすがりだった。
僕が見た時には、アリシアはすでにボロボロで意識がなかった。
別にこんな女どうなろうと構わない。
僕の所有物でしかないのだから。僕の所有物なんて他にもたくさんあるし、こいつが壊れても別にどうだっていい。
そんな僕の気持ちに反して身体はアリシアを守るように抱き締めていた。
「と、トム…?」
「ここから消えて。」
「え?」
「ここから消えろって言ってるのがわからないの?」
女たちが傷付いたように僕を見てくるのなんて関係ない。
とにかく、アリシアを医務室に運ばなくちゃ。
あぁ、なんで僕はこんなに怒ってるんだろう。なんでこんなにアリシアのことを心配してるんだろう。
別にこんな女どうでもいいのに。
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