一ヶ月 | ナノ


▽ 永遠に彼女を愛してる


彼女が死んだ。
最期は眠るように美しく綺麗に残酷に。

僕は結局彼女に好きも愛してるも言えなかった。
僕に遺されたのは、彼女のすべてが綴られた日記と彼女の最期の魔力が詰まったペンダントだけだった。
日記には本当にすべてが書いてあった。
彼女の死んだ理由も、秘密の部屋の場所も。




彼女、アリシア・ナギニは魔法界の名家の妾の子として産まれた。
彼女の母親は彼女を産むと同時に狂って彼女を育てるのは無理と判断。
結果、彼女は孤児院に引き取られた。

彼女は孤児院でゆっくりと、静かに時間を過ごした。
しかし、ある日彼女は、彼女の容姿とその性格を気に入ったマグルの男に引き取られる。
その男は、彼女を玩具として扱った。
自分がイライラしたときは彼女に暴力を振るい、自分の身の回りの世話はすべて彼女。さらに自分の欲が溜まったときは、その掃き溜めとして。

そんな生活を過ごして何年か経って彼女が十一になりホグワーツに行くと同時に、彼女の日記にはトム・リドルという名前が出るようになった。
彼女は幼い頃からトム・リドルを慕っていた。

長期休暇であの男にいいようにされても、彼女は彼がいれば幸せとまで書いてあった。
トム・リドルは彼女にとって世界だった。

しかし、何年も男にいいようにされてきた彼女の身体はガタが来ていた。
それを知ってもなお、彼女は自分の身体に無理を強いた。

だから、彼女の身体は壊れてしまった。



ならば、悪いのは誰だ。
僕の大切なものを壊したのはなんだ。


アリシア、僕が壊すから。
アリシアのすべてを奪ったものすべて。
僕からアリシアを奪ったんだ。
僕は赦さない。

アリシアを捨てたやつも、アリシアを忌々しいマグルに引き渡した孤児院も、アリシアを死に追いやったマグルも、

全部全部壊してやる。


彼は彼女が好きだった。
言葉にはできなくても、心の底から想っていた。
彼の心は黒に染まった。
彼女を奪った忌々しいものを壊すために。



「アリシア、愛してるよ。」


だから、僕を待ってて。



彼は彼女と永遠に一緒にいたかっただけだった。
あの穏やかな時間で時を重ね、そして静かに消えていければよかった。

だが、彼女は死んだ。
彼が唯一愛した少女は誰にも言うことなく、一人で逝ってしまった。
残酷な情報だけを遺して。

彼は、アリシアと愛しあえればいいとさえ思っていたのに。

どこを捜しても彼女はいない。


ねぇ、アリシア。
今度君に逢えた時は、僕は君に本当のことを言うよ。

何万回の大好きなんかじゃ足りない。
君に、僕の君にだけ特別な“愛してる”を。



彼は最初で最期の涙を流しながら、彼女に口づけをした。



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