▽ 貴方の心で眠りたい
『私、リドルが好きなの。一ヶ月でいいの。私と付き合ってください。』
アリシアにそう言われたリドルは驚いたように肩を動かす。
それは本当にちょっとだけ。観察力のいいアリシアではないと気付かないくらいに。
それからリドルは困ったように笑った。
綺麗、アリシアはただそう思った。
「ごめんね。僕、君のことあまり知らないから。」
『それでもいいの。一ヶ月、一ヶ月だけ。』
「本当にごめん『もし一ヶ月、私と付き合ってくれるなら、私は貴方に秘密の部屋の場所を教える。』……なんだって?」
私は卑怯者だから。
もしも、貴方と過ごせるなら私は前世の記憶だって利用する。
貴方が、好きだから。
「なんで君がそのことを知ってるんだい?」
『ごめんなさい…一ヶ月経ったら、なんでも話すから……』
「………」
『本当に一ヶ月でいいの。ただ私と一緒に過ごして……』
弱々しい声で僕に懇願する女に疑問しか湧いてこない。
何故彼女は僕が秘密の部屋を探してることを知ってる?
僕の演技は完璧だったはずだ。
なのに、何故?
僕がこいつに抱いたものは興味。
気がつけばリドルは彼女への答えとして何も言わずに頷いていた。
『ありがとう…、私はアリシア・ナギニ。レイブンクローの五年生。これから一ヶ月、よろしくお願いします。』
そう言って花が咲くように笑った女に心臓が鷲掴みにされたような気がした。
好きよ、好き、愛してる。
利用されるだけでもいいの。
だって私は卑怯者なのだから。
貴方の心に私が少しでも存在出来たのなら、それ以上の幸せはないわ。
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