▽ 望んだものは泡となって消えていった
「貴女はあと一ヶ月生きれるか分かりません」
そう私に告げたマダム ポンフリーはとても泣きそうな顔をしていた気がする。
『そう、ですか』
グッと何かを堪えるようにマダム ポンフリーに答えた。
私は分かっていたのかもしれない。
私の身体中にある醜い傷痕。
もう一生消えることのない私の心にある大きな確執は私の身体全てを脅かしていた。
それに気付いていて無理をしたのも私だから
『マダム、このことは誰にも言わないでくだい。』
「そんな!私は許しませんよ!ダンブルドアに言えば治るかもしれないのですよ?!」
マダムの言葉にフルフルと首を振る。
私の身体が治ることはきっとない。
自分の身体くらい自分で分かる。
『私は、誰にも迷惑をかけずに逝きたいの。お願い、マダム。私の最期のお願いよ。』
私の言葉に涙を流すマダムを見て、私はそっと医務室から出た。
自分の部屋に入るとアリシアは机の引き出しからゴソゴソと日記を出す。
それから、今日あった出来事をそれに綴った
【死】ーそれは自分がいなくなること。
アリシアという存在が消えることだと、彼女は認識していた。
それは彼女が一度【死】を体験したことがあるからこそ、言えること。
痛みも何もない穏やかなものだと彼女は知っている。
だからこそアリシアはマダム ポンフリーからそれを聞いたとき、心は穏やかだった。
しかし、彼女にも望みはあった。
『(どうせ、どうせ死ぬのなら、私は彼と最期に一緒にいたい……)』
それが彼女の最初の望み。
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