気付いてた。でも、それがイヤで
目が覚めると、私は白い部屋で寝ていてた。
ここはどこ?
私は、アオイに戻った…?
見知らぬ部屋に、そんな錯覚を起こしそうになるけど、チラリと視界に入る群青色の髪に、自分がまだヒナタだと気付く。
ううん。本当はもう気付いてた。
私はもう、もとの世界には、アオイには戻れないんだって。
でも、それを信じたくなくて、ずっと知らないフリして、
ずっと願ってた。
ヒナタを返してって、私をアオイにしてって。
『ふっ…、』
ポロリと涙が一粒零れ落ちる。
とたん、ダムが決壊したかのように、私の瞳からはボロボロと涙が流れた。
すると、バタンと私のいた部屋の扉が開く音がしてそちらを見る。
すると、そこには私の好きな人。
『ぁっ…、』
「なんかあったのか?」
ナルトくんが近付いたかと思うと、ペロリとまるで犬のように私の目尻を舐める。
それに、顔が熱くなるのを隠すようにうつむけば、ナルトくんが私の顔を覗き込む。
『な、るとく、』
「ん?なんだ?」
フワリ、まるで私を安心させるように微笑む彼が、私の【識っている】彼でないことに気付いた。
でも、私が好きになったのは、私の【識っている】ナルトくんじゃなくて、私の目の前にいるナルトくん。
だから、別にいいかなぁ、なんてフワフワとする高揚感の中、そんなことを考えた。
でも、すぐにハッとする。
私はナルトくんが好き。だけど、ナルトくんが好きなのは私じゃなくて、
その事実にさっきまでの高揚感は消え、虚しさと悲しさが残る。
「なぁ、」
『ナルトくん、ここどこ…?』
「オレとアオイの部屋に決まってんだろ?」
そう言って至極楽しそうに笑う彼は、どこか歪んでいるように見えた。
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