なにゆえですか! 26


何時間くらいその場で泣いてたんだろう。
気付いたときには、もう辺りはオレンジ色で、少しだけ肌寒い。


『帰らなくちゃ…!』


なんだかすっごくすっごくアリスお姉さんたちに会いたくて、
アリスお姉さんにギュッて抱き締めて欲しい。マットお兄さんに怒られたい。みんなと、笑いあいたい。


『そうだ!ゾンビさんも一緒に行こ!』


泣いてる私とずっと一緒にいてくれたゾンビさんの手を握る。ゾンビさんの手はやっぱり冷たかった。


「ニ…ゲテ…」
『ぇ…?』
「ココ、アンブレラ…キケン」
『ゾンビさん…?』


ゾンビさんの言ってることがわからなくて、首を捻る。なんで危険なんだろう。


『じゃ、ゾンビさんも一緒に逃げよ…?』
「ダメ…」
『やだやだ、一緒に逃げようよ。アリスお姉さんたちは優しいから、一緒にいても怒らないよ、ね?』
「オネガ…モウ、」


ポロ、ゾンビさんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
綺麗な涙。人間と変わらない、私と一緒。

まるで静止画のようにそれに魅入る。

次の瞬間、ゾンビさんは私に襲いかかってきた。


『!?』
「ァ…アー…」
『ゾンビさん?!なん、やだあっ、』


ベロン、ゾンビさんが私の首筋を舐める。
生暖かい涎が私の首筋を這う。

さっきまで優しかったのに、さっきまで一緒にいてくれたのに、さっきまで頭を撫でてくれたのに、


『やだやだやだ、ゾンビさん、なんで、』


ゾンビさんが私の服を破く。

さっきまで人間だったんだよ。
優しい優しい人だったんだよ。
私の頭撫でてくれて、慰めてくれたの。


『アリスお姉さあん、マットお兄さあん…』


やだやだ、食べられるやだ。
またみんなで笑うの。楽しむの。
今日はクリスマスなんだよ。
ケーキ食べるんだよ。


『誰か助けて…』


私に跨るゾンビさんに泣きながら助けを求める。でも、そんなことしてもゾンビさんは正気に戻ってくれなくて。

ゾンビさん、ゾンビさん、正気に戻って。

ギュッと目を瞑りながらそう願った瞬間、聞こえたのは一発の銃声と私の名前を呼ぶ声だった。


prev next

bkm
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -