何時間くらいその場で泣いてたんだろう。
気付いたときには、もう辺りはオレンジ色で、少しだけ肌寒い。
『帰らなくちゃ…!』
なんだかすっごくすっごくアリスお姉さんたちに会いたくて、
アリスお姉さんにギュッて抱き締めて欲しい。マットお兄さんに怒られたい。みんなと、笑いあいたい。
『そうだ!ゾンビさんも一緒に行こ!』
泣いてる私とずっと一緒にいてくれたゾンビさんの手を握る。ゾンビさんの手はやっぱり冷たかった。
「ニ…ゲテ…」
『ぇ…?』
「ココ、アンブレラ…キケン」
『ゾンビさん…?』
ゾンビさんの言ってることがわからなくて、首を捻る。なんで危険なんだろう。
『じゃ、ゾンビさんも一緒に逃げよ…?』
「ダメ…」
『やだやだ、一緒に逃げようよ。アリスお姉さんたちは優しいから、一緒にいても怒らないよ、ね?』
「オネガ…モウ、」
ポロ、ゾンビさんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
綺麗な涙。人間と変わらない、私と一緒。
まるで静止画のようにそれに魅入る。
次の瞬間、ゾンビさんは私に襲いかかってきた。
『!?』
「ァ…アー…」
『ゾンビさん?!なん、やだあっ、』
ベロン、ゾンビさんが私の首筋を舐める。
生暖かい涎が私の首筋を這う。
さっきまで優しかったのに、さっきまで一緒にいてくれたのに、さっきまで頭を撫でてくれたのに、
『やだやだやだ、ゾンビさん、なんで、』
ゾンビさんが私の服を破く。
さっきまで人間だったんだよ。
優しい優しい人だったんだよ。
私の頭撫でてくれて、慰めてくれたの。
『アリスお姉さあん、マットお兄さあん…』
やだやだ、食べられるやだ。
またみんなで笑うの。楽しむの。
今日はクリスマスなんだよ。
ケーキ食べるんだよ。
『誰か助けて…』
私に跨るゾンビさんに泣きながら助けを求める。でも、そんなことしてもゾンビさんは正気に戻ってくれなくて。
ゾンビさん、ゾンビさん、正気に戻って。
ギュッと目を瞑りながらそう願った瞬間、聞こえたのは一発の銃声と私の名前を呼ぶ声だった。
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bkm