なにゆえですか! 25


アリスSide

「名前ー!」


クイーンたちから連絡を貰ったあと、この広い街をマットと一緒に必死で名前を捜す。
私たちの大切な女の子。

人を殺して穢れた私を家族だと、姉だと言ってくれた。


「いたか?!」
「ううん、いないわ…名前…」


心配で心配で、胸が押し潰される。
ここは比較的に治安のいい場所だけど、悪いやつがいないわけじゃない。名前を襲うやつが出てくるかもしれない。

名前がもしもそんな奴等と出会ったら…

想像するだけで、恐ろしくてたまらない。


「……おい、路地の方は見たか?」
「ぁ…!」
「捜すぞ!」


お願い、お願いよ、名前。
私たちのもとから、消えていなくならないで。

貴女は、もう私の大切な女の子なんだから。


マットSide

路地裏を探し回りながら、思い浮かぶのは名前の笑顔。

妹のように大切で、慈しみたい大切な女の子。俺がこの手で護ると誓った女の子。
その女の子が今泣いてるかもしれない。

襲われてるかも、しれない。

そう考えるだけで、ゾッとする。
名前が他人に嬲られる姿なんて、

ゾンビでもない人間を殺したくなる。

人殺しになってでも、俺はあいつを守りたい。
そう、考えてしまう。


「名前ー!」


路地裏に声が反響する。
名前はいない。


「どうして…!」
「アリス、いまは名前を探そう」
「…えぇ、そうね、」


今にも泣き出しそうなアリスの肩を叩いて、前を向く。

するとパシャリ、水滴の跳ねる音。


「誰だ!」
【……】


銃を構える。
暗いせいか、男だか女だかよく見えない。


【名前ちゃんなら、あちらですよ】
「…レッド、クイーン…?」
【ふふっ】


そこにいたのはホログラムから映されたレッド・クイーンと似ている少女。
いや、レッド・クイーンは今ジルたちと共にいるはずだ。
じゃあ、ここにいるのは…?


【そんなことどうでもいいですよね?ほら、早く行かないと名前ちゃん、食べられちゃいます】


その言葉にハッとする。
そうだ、こいつが何かなんてどうでもいい。
とにかく、名前を助けることが俺たちの一番だ。


「マット、こいつの言う通りだわ。早く名前の元に行きましょう」
「ああ。」


俺たちは守らなくちゃいけない。
自分たちを守って傷付いた少女を。


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bkm
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