なにゆえですか! 24


『ふぇぇえんん!!』


一番最初に、お父さんとお母さんを認識した時、私は五歳だった。

その頃の私の家には、家政婦さんしかいなくて、お父さんとお母さんなんて呼べる人がいることすら知らなかった。


「はいはい、お嬢様。泣き止んでくださいな。」


一人目の家政婦さんは、すごく優しかったのを少しだけ憶えてる。

ある日、お母さんが来た。
テレビに出てるお母さんのことを、家政婦さんに聞いてたから、それがすぐにお母さんだってわかった。
けど、それだけで。

お母さんは私のことなんて、めもくれずに、すぐに仕事に行った。
それが私がお母さんと初めて会った日。

それから、優しかった家政婦さんがやめて、次に来たのは私情を挟まないで、ただ仕事をするだけの家政婦さんだった。

私はというと、お母さんとお父さんから愛してもらおうと必死だった。
六歳になった私はこの“家族”の異常に気付いて、

たくさん勉強した。
たくさん笑った。
そしたら、お父さんとお母さんが私に笑いかけてくれるって信じてたから。

でも、それは間違いで。


お母さんは言った。

「子どもなんて産むんじゃなかった!」

お父さんは言った。

「子どもが欲しいって言ったのはお前だろ!責任持て!」


大企業の社長であるお父さんと、女優であるお母さんの子どもとして生まれた私は、誰からも遠巻きに見られる存在で、友達なんていなかった。

出来たとしても、それは私のお母さんとお父さんが目当てで。

ずっと願ってた。
“本当の家族をください”って。


『ふぇえんん…』


暗い路地裏で一人体操座りをしながら、嗚咽を溢す。

なんでお父さんとお母さんは、私の家族になってくれなかったんだろう。
私はダメなのかな。悲しくて、哀しくて、

なんだか悲しくて、

泣いてると、ふと、頭を撫でられる。


『なにゆぇですかぁ…?』


そこには、ゾンビさん。
ゾンビさんが、私の頭を撫でてる。
なんでかはわからないけど、すごく安心して、落ち着く。


『ふぅ、うぁ…!』


隣に座る、ボロボロなゾンビさんの服を引っ張りながら、また涙を零した。

その間、ゾンビさんは私を襲わないで、優しく頭を撫でてくれてた。


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bkm
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