『ふぇぇえんん!!』
一番最初に、お父さんとお母さんを認識した時、私は五歳だった。
その頃の私の家には、家政婦さんしかいなくて、お父さんとお母さんなんて呼べる人がいることすら知らなかった。
「はいはい、お嬢様。泣き止んでくださいな。」
一人目の家政婦さんは、すごく優しかったのを少しだけ憶えてる。
ある日、お母さんが来た。
テレビに出てるお母さんのことを、家政婦さんに聞いてたから、それがすぐにお母さんだってわかった。
けど、それだけで。
お母さんは私のことなんて、めもくれずに、すぐに仕事に行った。
それが私がお母さんと初めて会った日。
それから、優しかった家政婦さんがやめて、次に来たのは私情を挟まないで、ただ仕事をするだけの家政婦さんだった。
私はというと、お母さんとお父さんから愛してもらおうと必死だった。
六歳になった私はこの“家族”の異常に気付いて、
たくさん勉強した。
たくさん笑った。
そしたら、お父さんとお母さんが私に笑いかけてくれるって信じてたから。
でも、それは間違いで。
お母さんは言った。
「子どもなんて産むんじゃなかった!」
お父さんは言った。
「子どもが欲しいって言ったのはお前だろ!責任持て!」
大企業の社長であるお父さんと、女優であるお母さんの子どもとして生まれた私は、誰からも遠巻きに見られる存在で、友達なんていなかった。
出来たとしても、それは私のお母さんとお父さんが目当てで。
ずっと願ってた。
“本当の家族をください”って。
『ふぇえんん…』
暗い路地裏で一人体操座りをしながら、嗚咽を溢す。
なんでお父さんとお母さんは、私の家族になってくれなかったんだろう。
私はダメなのかな。悲しくて、哀しくて、
なんだか悲しくて、
泣いてると、ふと、頭を撫でられる。
『なにゆぇですかぁ…?』
そこには、ゾンビさん。
ゾンビさんが、私の頭を撫でてる。
なんでかはわからないけど、すごく安心して、落ち着く。
『ふぅ、うぁ…!』
隣に座る、ボロボロなゾンビさんの服を引っ張りながら、また涙を零した。
その間、ゾンビさんは私を襲わないで、優しく頭を撫でてくれてた。
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bkm