確信を持っているような浦原さん。
きっと、もう浦原さんは気付いてる。
『一つ、間違ってます。』
「何がスか、」
『わたしは、霊圧を消してるつもりありません。』
そう。わたしは霊圧を消してない。
ただ、包まれてるだけ。
「じゃあ、なんで、」
『教えてあげます。』
腕に手をズブリとさして、春夏秋冬を取り出す。
瞬間、わたしの身体から霊圧が放出される。
「なっ!」
『わたしがこの斬魄刀の鞘であるように、この斬魄刀はわたしの鞘なんです。』
わたしの霊圧は春夏秋冬によって包まれてる。
だから、どれだけ死神たちがわたしの霊圧を探ろうと、わたしの霊圧は見つからない。
鞘に包まれているのだから。
『あともう一つ。春は曙、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて。知ってます?』
「……?」
『今の時間帯は、歌夕の能力が最も引き出される時間帯なんです。』
歌夕の持っている、もう一つの能力。
“記憶の操作”
朱く染まる今の時間帯なら、浦原さんの記憶からわたしの記憶だけを抜き取るのは簡単。
『浦原さん、ごめんなさい。』
「ーーっ!」
卍解 【秋條歌夕】
どうかわたしのことは来たるその時まで忘れてください。
浦原さんはこの物語の大切な鍵。
まだ、わたしのことに気付いちゃいけない。
だって、わたしは異物なんだから。
紅葉が浦原さんを包む。
わたしのエゴのために、今からわたしは貴方の記憶からわたしを消すのです。
どうか、どうか、わたしを許さないで。
卑怯で矮小なわたしを。
有沢名前の中にある、雛森名前という人物を。
「これで、本当によろしかったんですの?」
『歌夕…』
「わたくしは、名前様のいうことを否定するつもりはないですわ。ですが、名前様は…」
『いいの。』
「名前様…」
『これで、いいんだよ…』
地面に倒れてる浦原さんをベンチに横にしてから、私は自分の家に帰った。
自分の瞳から涙が流れていたのは、気付かないフリをした。
prev next
bkm