なにゆえですか! 23


クイーンSide

『おかあ、さん、?』


名前がポツリと呟いた。

その言葉に驚いて、名前が見てるほうを見てみると、そこには名前の面影のある女性。


【名前…?】
『…な、……ゃ、』
【名前!】


名前がなにかをポツリと呟いた瞬間、名前はどこかへ走り出した。


「名前?!」


名前の行動にジルが気付いて名前を追おうとする。
けど、今日はクリスマスってこともあって、たくさんの人混み。
すぐに名前は人混みに紛れ込んでしまった。


「あの子、どうしたの?!」
「おい、早く追わねーと見つかんねぇぞ!」
「わたしも捜す!」
「クイーン!何か知らない?!」
【さっき、あのテレビを見て、】

お母さんって呟いてたわ。


わたしの言葉にみんなの動きが止まる。

わたしは、名前のことを何も知らない。
あの時分かったのは、彼女の名前だけだったから。

けど、わたしはわたしの意志で名前を愛して、護ることを決めた。


「あれは…、」
「あの女優、子どもなんていねぇぞ…?」


いつも笑って、わたしたちに何かをくれる名前の心の中に闇があるなんて、知らなかった。


名前Side

走って走って走って。

大きなビルの前。
あの番組が生中継してる場所。
途中、いろんな人に聞いたから間違いない。

でも、私はお母さんに逢って、どうするんだろう。
また裏切られることはわかってるのに。


『……ちがう…』


そういえば、ここは私がいた世界じゃないんだった。

今、番組の中で笑ってるあの人は、私のお母さんじゃない。

それに、さいしょから、私にはおかあさんなんて、いなかったんだった。

ポロポロポロポロ、涙が零れ落ちる。

側には、クイーンちゃんも、アリスお姉さんも、マットお兄さんも、アンジーちゃんも、ジルお姉さんも、カルロスお兄さんもいない。

この世界で、ひとりぼっちな気がして。

小さい頃、見たことがある。
そのドラマでは「家族の愛」をテーマに描かれていて。

私の家では、ありえないような物語がそこにはあった。


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