「黒崎サンに近い貴方が霊圧が全くないのはおかしいんスよ。」
そう言ってまっすぐわたしを見た彼に、わたしはふわりと微笑んだ。
▽
《何故、人間が…!!》
最近増えた虚たちを春夏秋冬で斬りつける。
学校の帰り道。
まだ辺りは明るくて、日が沈む前の出来事。
『ありがとう、春夏秋冬。』
「いーえ!まだまだ暴れ足りないくらいだわ!」
月華の言葉に笑みを零しながら、刀を自分の身体の中にしまう。
春夏秋冬には鞘がない。死神時代にあった鞘はなくなり、わたし自身が鞘として春夏秋冬をしまう。
一心同体のわたしたち。
「有沢名前さんスか?」
後ろから聞こえた声に振り向く。
「浦原喜助です。以後、お見知り置きを。」
油断ならない彼が、わたしの存在に気付いたとき、何かが起こる予感はしていた。
『浦原さん…ですか?何の用でしょう?』
「ここじゃあ、なんですから、アタシの家に来ませんか?」
『えっと…ごめんなさい。知らない人の家には…』
「怪しい人じゃないんで遠慮しないでくださいよ。」
浦原さんの誘いを丁寧に断る。
結局、折れなかった浦原さんに妥協して、近くの公園で話し合うことになった。
…もしも、わたしが浦原さんのこと知らなかったら、浦原さんのこと通報してたかもしれない。
そのくらい、浦原さんは怪しかった。
「率直に聞きます。名前さんは、何スか?」
『……人ですよ?』
公園について、ブランコに乗りながら、聞いてきた浦原さんに笑顔で答える。
人。わたしは人なのかな。
死神としての力を持つわたし。
でも、死神にはなれない、中途半端な人。
…考えるのやめよ。暗くなっちゃうや。
「…質問を変えます。貴方、虚が見えてますよね?」
その言葉には答えられない。
見えてる、そう答えたら、どうなるんだろう。
「そもそも、おかしいんスよ。」
バレて、しまうかもしれない。
けど、いつかはバレるって思ってた。
隠し通せるはずない。
だって、わたしは自分から関わることを選んだんだから。
「黒崎サンの影響力は偉大なんスよ。彼に近い人間は少なからず霊圧を持ってるんです。霊圧が全くないなんてことはありえない。アナタは特に。幼い頃は霊が見えていたという話も聞いてますし。でも、アナタから霊圧を感じない。霊圧がない場合、一番怪しいのは霊圧を消してるかってことです。でも、霊圧を消せるのは…、」
『上位の死神だけ。』
「!」
人は霊圧を消せない。
霊圧を誰にも気付かれないように消すには、そうとう強い死神に限られる。
「貴方、朽木サンの言ってた、雛森名前さんですね?」
その言葉に、わたしはただただ微笑んだ。
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bkm