金盞花に哭く 19


「黒崎サンに近い貴方が霊圧が全くないのはおかしいんスよ。」


そう言ってまっすぐわたしを見た彼に、わたしはふわりと微笑んだ。





《何故、人間が…!!》


最近増えた虚たちを春夏秋冬で斬りつける。

学校の帰り道。
まだ辺りは明るくて、日が沈む前の出来事。


『ありがとう、春夏秋冬。』
「いーえ!まだまだ暴れ足りないくらいだわ!」


月華の言葉に笑みを零しながら、刀を自分の身体の中にしまう。
春夏秋冬には鞘がない。死神時代にあった鞘はなくなり、わたし自身が鞘として春夏秋冬をしまう。

一心同体のわたしたち。


「有沢名前さんスか?」


後ろから聞こえた声に振り向く。


「浦原喜助です。以後、お見知り置きを。」


油断ならない彼が、わたしの存在に気付いたとき、何かが起こる予感はしていた。


『浦原さん…ですか?何の用でしょう?』
「ここじゃあ、なんですから、アタシの家に来ませんか?」
『えっと…ごめんなさい。知らない人の家には…』
「怪しい人じゃないんで遠慮しないでくださいよ。」


浦原さんの誘いを丁寧に断る。
結局、折れなかった浦原さんに妥協して、近くの公園で話し合うことになった。

…もしも、わたしが浦原さんのこと知らなかったら、浦原さんのこと通報してたかもしれない。
そのくらい、浦原さんは怪しかった。


「率直に聞きます。名前さんは、何スか?」
『……人ですよ?』


公園について、ブランコに乗りながら、聞いてきた浦原さんに笑顔で答える。

人。わたしは人なのかな。
死神としての力を持つわたし。
でも、死神にはなれない、中途半端な人。

…考えるのやめよ。暗くなっちゃうや。


「…質問を変えます。貴方、虚が見えてますよね?」


その言葉には答えられない。
見えてる、そう答えたら、どうなるんだろう。


「そもそも、おかしいんスよ。」


バレて、しまうかもしれない。
けど、いつかはバレるって思ってた。

隠し通せるはずない。
だって、わたしは自分から関わることを選んだんだから。


「黒崎サンの影響力は偉大なんスよ。彼に近い人間は少なからず霊圧を持ってるんです。霊圧が全くないなんてことはありえない。アナタは特に。幼い頃は霊が見えていたという話も聞いてますし。でも、アナタから霊圧を感じない。霊圧がない場合、一番怪しいのは霊圧を消してるかってことです。でも、霊圧を消せるのは…、」
『上位の死神だけ。』
「!」


人は霊圧を消せない。

霊圧を誰にも気付かれないように消すには、そうとう強い死神に限られる。


「貴方、朽木サンの言ってた、雛森名前さんですね?」


その言葉に、わたしはただただ微笑んだ。


prev next

bkm
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -