ルキアちゃん、元気そうだったな。
わたしを見た時、すごく驚いてた。
でも、ごめんね。
わたしはもう、ルキアちゃんの知ってる雛森名前じゃないの。
わたしは有沢名前だから。
わたしのことには気付かないで。
わたしはみんなを見てるだけで幸せだから。
一目、見れればいいの。
脳裏に浮かぶのは、生まれ変わっても忘れられない愛おしい人。
『織姫ちゃん、おはよう。』
「織姫、おはよー。」
「あ!たつきちゃんと名前ちゃんおはよう!」
朝、一番最初に会った織姫ちゃんに笑顔で挨拶をする。
笑顔な織姫ちゃんの腕や足から見える傷痕から、目を逸らすように竜貴ちゃんの方を見る。
わたしはあの傷痕が彼女の兄だった虚によるものだって知ってる。
けど、助ける気はないんだ。
竜貴ちゃんと織姫ちゃんが話してる横で、祈る。
神様、ごめんなさい。
わたしは、やっぱり弱虫です。
「名前…?」
泣きそうなのを我慢していれば、竜貴ちゃんがわたしの顔を覗き込んでいた。
『…へ?どうしたの?』
「いや、話聞いてた?」
『ぁ、ごめんね。ボーッとしてた。』
わたしの言葉に織姫ちゃんがにこぉっと笑う。
「あのね、あのね!今日、二人とも私の家にお泊まりに来ない?」
……あぁ。今日なんだ。
『ごめんね。わたしは遠慮しとくね。竜貴ちゃんは行ってきなよ。お母さんには言っておくから。』
ごめんね。わたしは今日、竜貴ちゃんを見捨てるの。
わたしは何がしたいんだろう。
大切な人を犠牲にして、
あぁ、もうわかんない、わかんないよ。
誰にも頼れない。
誰にも言えない。
乱菊ちゃん、わたし、乱菊ちゃんに逢いたいよ。
いつもわたしを見捨てないで、優しくしてくれた優しい優しいわたしの大切な親友。
苦しい。
なんだか、息苦しいの。
『さみしいよ…』
竜貴ちゃんのいない部屋で、一人布団に包まりながら、涙を零した。
▽
「?」
「松本、行くぞ。」
「あ、待ってくださいよ、隊長ー!」
なんだか、久しぶりにあの子の声を聞いた気がした。
「……名前……」
優しい優しい、一途なあの子。
「っ、」
ポツリとあたしが呟いた言葉が聞こえたのか、隊長が苦しそうに顔を歪めたことには気が付かないフリをした。
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bkm