金盞花に哭く 17


ルキアちゃん、元気そうだったな。

わたしを見た時、すごく驚いてた。

でも、ごめんね。
わたしはもう、ルキアちゃんの知ってる雛森名前じゃないの。

わたしは有沢名前だから。

わたしのことには気付かないで。
わたしはみんなを見てるだけで幸せだから。

一目、見れればいいの。

脳裏に浮かぶのは、生まれ変わっても忘れられない愛おしい人。


『織姫ちゃん、おはよう。』
「織姫、おはよー。」

「あ!たつきちゃんと名前ちゃんおはよう!」


朝、一番最初に会った織姫ちゃんに笑顔で挨拶をする。

笑顔な織姫ちゃんの腕や足から見える傷痕から、目を逸らすように竜貴ちゃんの方を見る。

わたしはあの傷痕が彼女の兄だった虚によるものだって知ってる。

けど、助ける気はないんだ。

竜貴ちゃんと織姫ちゃんが話してる横で、祈る。

神様、ごめんなさい。
わたしは、やっぱり弱虫です。


「名前…?」


泣きそうなのを我慢していれば、竜貴ちゃんがわたしの顔を覗き込んでいた。


『…へ?どうしたの?』
「いや、話聞いてた?」
『ぁ、ごめんね。ボーッとしてた。』


わたしの言葉に織姫ちゃんがにこぉっと笑う。


「あのね、あのね!今日、二人とも私の家にお泊まりに来ない?」


……あぁ。今日なんだ。


『ごめんね。わたしは遠慮しとくね。竜貴ちゃんは行ってきなよ。お母さんには言っておくから。』


ごめんね。わたしは今日、竜貴ちゃんを見捨てるの。


わたしは何がしたいんだろう。
大切な人を犠牲にして、

あぁ、もうわかんない、わかんないよ。


誰にも頼れない。
誰にも言えない。


乱菊ちゃん、わたし、乱菊ちゃんに逢いたいよ。

いつもわたしを見捨てないで、優しくしてくれた優しい優しいわたしの大切な親友。

苦しい。
なんだか、息苦しいの。


『さみしいよ…』


竜貴ちゃんのいない部屋で、一人布団に包まりながら、涙を零した。




「?」
「松本、行くぞ。」
「あ、待ってくださいよ、隊長ー!」


なんだか、久しぶりにあの子の声を聞いた気がした。


「……名前……」


優しい優しい、一途なあの子。


「っ、」


ポツリとあたしが呟いた言葉が聞こえたのか、隊長が苦しそうに顔を歪めたことには気が付かないフリをした。


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bkm
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