黄金に手を伸ばす 13


「アイリス、アイリス…姉上…」


どうしてこうなった。

あの宴の席で、なぜか神官が結婚について話始めたと思ったら、花嫁として私を推薦しやがった。

やだよ。精神的には近親相姦だよ。
無理無理無理。絶対無理。

そして賛成したやつら。
絶対金の瞳ってだけで、私をアイリスと勘違いしてる。
いや、勘違いじゃないんだけど。それは違うでしょ。

とりあえず私の貞操の危機。

譫言のように私の元名前を呼び続けるメンフィスにため息が出る。

しかも、腰にしっかりと腕を回して膝枕状態。
そういうのやめてほしい。


「私は、私は…アイリスの言う通り、王となった…今度はアイリスが、約束を守る番…」
『王様、私の名前はナマエですので、ちょっと王様の言ってる意味がわからないです。』
「私と、結婚してくれ。」
『だーかーらー。私はアイリスじゃないってば。』


イライラするぞ。
イライラする。

キャロルとは引き離されたし、セチもいないし、セフォラもいないし。


「何故だ。私を、何故拒絶する。」
『だから、私はナマエなんです。アイリスさんとは全然全くこれっぽっちも関係ありません。』


首絞めるぞこのやろー。
わからないやつだ。

つーか、私はおまえと結婚しないからね。
私、独身貴族になる予定だからキリッどやぁ。

うん。ふざけてる場合じゃないや。


『…てか、ほんとにキャロルとセチはどこ行った。』


私を抱き締めたまま、離さないで眠りに入ったメンフィスを見ながら、あの二人を助けて、さっさと帰りたいと切に願った。





草木も眠る丑三つ時。
うそ。時間なんて知らないけど。
とりあえず夜中。

メンフィスが寝たので抜け出してみた。
気持ち的、近親相姦なんて絶対ごめんだよ。

さっさとキャロルとセチつれて逃げるべき。

『(それにしたって、セチのいるところは予想付くけど、キャロルのいるところは予想がつかない。)』


きっと、セチは牢屋にいれられてる。
いちおー、奴隷だからね。
くそう。私がアイリスとして生きてるうちに奴隷制度なくそうと思ったのに。

なんて考えてる間にセチ発見。


『セーチ。』
「……名前?」
『…傷の手当てしなくちゃじゃん。』


セチの背中はムチで叩かれたのか、傷だらけ。
私がいない間にどうしてそうなった。


『うわぁ…酷い…さっさと治療しないと化膿する』
「大丈夫だよ。生まれた時から奴隷をやってるんだもん。慣れてるさ。」


セチが笑ってそう言うけど、私はその奴隷制度が気に入らない。
身分なんてなくていいのに。
人が、傷付くことはないほうがいい。


『それでも、私はセチが傷付くのはイヤだよ。』
「…はは。名前は優しいんだね。」


なにこの可愛い生き物。

本当に嬉しそうに笑うセチを可愛がりたい衝動に駆られる。


「……やはり、ここにいたか。」
「『!』」


そういえば、最初はメンフィスも可愛かったっけ。

なんて思いながら、目がイってるメンフィスを見て、泣きたくなった。嘘だけど。


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bkm
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