金盞花に哭く 15


夜、一護くんの霊圧を感じた。
ルキアちゃんが来たんだって、わかった。

だから、わたしは今から出来ることをしなくちゃ。


『竜貴ちゃん、わたし、今日休むね。』
「ん…大丈夫か?」
『頭痛いだけだから、心配しないで。』


にっこりと笑みを浮かべた。


竜貴ちゃんがいなくなった部屋で、そっと目を閉じる。

集中、しなくちゃ。

次に、目を開けると、わたしは幻想的な花たちが咲き誇っている花畑の中に立っていた。

久しぶりの精神世界に、ギュッと拳を握る。


春、夏、秋、冬。
四季を司る、わたしの斬魄刀。

わたしの斬魄刀は能力的には四本に分けられる。

春を司る、春草月華。
夏を司る、夏神奏夜。
秋を司る、秋條歌夕。
冬を司る、冬涙香朝。

卍解状態になると、一つの能力が解放状態になる。

だから、わたしはそれを好きな時に自由に使いこなせなくちゃいけない。

この斬魄刀の能力は、使い方次第で、強くもなるけど、弱くもなる。


「だから、唯一あたしたちを使い分けることが出来る名前を、あたしたちは離さなかった。」


木々がさざめく。


「俺たちは、再び名前の元に集った。」


新緑が舞う。


「それがわたくしたちの意志。」


優しい風が髪を揺らす。


「誰も僕たちの意志を覆すことは出来ない。」


冷たい雪がわたしの頬を撫でた。


「「「「お久しぶりです。我が主。」」」」


片膝を付き、わたしに忠誠を誓う格好をする斬魄刀に、わたしは泣きそうなのを堪えて、必死に笑った。


『…っ、ただいまっ!』


大切な、わたしのパートナー。





「あーん!やっぱり名前の抱き心地さいっっっこうだわ!」


ぎゅーッと思いっきりわたしを抱き締める月華に笑いが零れる。

うーん…
今まで来なかったのに、普通に受け入れてくれたのは嬉しいけど、やっぱり月華は女装してるんだ…

月華:春を司る斬魄刀。女装癖あり。


「お前、男だろ。気持ち悪い。」


わたしを抱き締めていた、月華をべリッと離して、ポツリと「別に、あんたの為じゃないからな。」なんて呟く奏夜。
そう言いながらも、わたしの手を繋ぐ奏夜にクスリと笑みを零す。

奏夜:夏を司る斬魄刀。素直じゃない子。


「あはっ。奏夜って、ホントむっつりだよねぇ?気持ちわるーい。」


ニコニコと笑みを零しながら、わたしと手を繋いでいる奏夜の手をつねる香朝。
その笑みに末恐ろしいものを感じる。

香朝:冬を司る斬魄刀。美少年。


「なによ!あたしの名前補給を邪魔しないでちょうだあい!」
「うるさい。変態。香朝、俺はむっつりじゃないからな。」
「むっつりも変態もきっもちわるぅー。」
「「なんだと?」」
「だぁかぁらぁ、気・持・ち・悪・い・の!」


喧嘩をし始めた三人をオロオロとしながら、どうしようと泣きそうになる。

すると、わたしの横に立った歌夕がにっこりとわたしに向かって微笑む。


「貴方達?名前様が引いていらっしゃるでしょう?さっさと黙りなさい。」
「「「ごめんなさい。」」」


わたしの斬魄刀の中で、一番しっかりしてるのは、歌夕だったりするのです。


歌夕:秋を司る斬魄刀。彼らをまとめるお姉さん。


「で、名前様。この度は、どうしたのですか?」
『あの、わたし…』


歌夕がわたしににっこりと微笑んで問う。

わたしは、言ってもいいのかな。今まで、わたしは斬魄刀から逃げてた。
自分の身体の中に、この斬魄刀があるって気付いても、わたしは逃げてた。

怖かったから。怖かったの。


「名前、あたしたちは、あんたの斬魄刀。」
「お前の気持ちは全て気付いてる。」
「僕たちに、名前の望みを。」


あぁ。わたしは、忘れてた。
斬魄刀は、わたしの、死神の唯一無二のパートナーだって。

裏切られるはずがない。裏切るはずがない。

わたしと春夏秋冬は、パートナーなのだから。


『お願い…、わたしと一緒に戦って…』
「「「「お任せください、我が主。」」」」


わたしは、異物。
だけど、パートナーがいるから、わたしはもっと頑張れる。


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