黄金に手を伸ばす 12


目が覚めると、一番最初に目に入ったのは、私の元弟の寝顔だった。

あれ?キャロルはどこに行った?
セチもいないし…
私を一人にするなんて泣くぞ。嘘だけど。

ちょっと現実逃避をすることにした。


「む……」


隣りから、掠れる色っぽい声が聞こえて、ビクリと身体を揺らす。

だけど、深い眠りについているらしく、私を抱き締めると、そのまま寝てしまった。


『(いや、無理。)』


それにしたって、力が強過ぎて、腕の中から出れないんだけど。

え、逃げる選択肢はなし?
嘘でしょ?おーい。

誰かヘルプ。





私の元弟が目を覚ましたあとは、すごかった。色々と。
そして、私の無表情すげぇやい。

なんで、私は湯浴みさせられてんの。
誰か通訳プリーズ。

てか、キャロルとセチをプリーズ。
私、どうせ過ごすならあの二人と過ごしたい。

なんにも分からないまま、湯浴みをさせられて、綺麗に着飾れて、宴の場に連れてこられた私。

泣くぞ。嘘だけど。
くそぅ。こういう時こそ、仕事しろ。私の表情筋。


「おぉ…これは…!」
「ほぅ…」
『………はぁ…』
「ここへこい。」


グイッとメンフィスに腕を引かれ、メンフィスの隣りに座らせられる。
私と反対方向の隣りにはキャロルがいた。


『キャロル!』
「ナマエ、ナマエ!」


メンフィスを押し退けて、キャロルを抱き締める。
私と同じことをされたのかは、分からないけど、キャロルも私と同じように着飾っていた。


『キャロル、可愛い。』
「そんなことより、ここから逃げないと!セチも捕まっちゃったの!」
『……りありー?』
「イエス。」


いやん。それは確かに助けないとですね。

それにしたって、私のスルースキルぱない。

メンフィス素通り。

まあ、とりあえず、二人を助けるまでは営業スマイル全開でいくかな。


『ふふ。メンフィス様、なぜ私をご召喚に?分からないわ。』


今の私は私じゃないんです。

にっこりと微笑みながら、メンフィスの頬にスルスルと手を伸ばそうとする。

すると、メンフィスは泣きそうになりながら、私の手を掴んで、自分の頬に押し当てた。

あれ?私の思ってた反応と違う。


「あい、りす…」
『アイリス…?残念ながら、私はアイリスではありませんわ。』


何を勘違ったのか、私をアイリスとして見てやらぁ。この弟。私は名前だっつーの。いや、間違えた。ソフィアだっつーの。


「アイリスアイリスアイリスアイリス……逢いたかった…」
『違うっつてんだろぼけぇ。』


思わずぼそりと言っちゃったけど、誰も気にせず私をアイリスと見てるのが分かった。

ただ、アイシスとキャロルだけは、私を私として見てたけど。

てか、今気付いたら、この服って、アイリスの服じゃん。

やば。キレそう。


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bkm
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