目が覚めると、一番最初に目に入ったのは、私の元弟の寝顔だった。
あれ?キャロルはどこに行った?
セチもいないし…
私を一人にするなんて泣くぞ。嘘だけど。
ちょっと現実逃避をすることにした。
「む……」
隣りから、掠れる色っぽい声が聞こえて、ビクリと身体を揺らす。
だけど、深い眠りについているらしく、私を抱き締めると、そのまま寝てしまった。
『(いや、無理。)』
それにしたって、力が強過ぎて、腕の中から出れないんだけど。
え、逃げる選択肢はなし?
嘘でしょ?おーい。
誰かヘルプ。
▽
私の元弟が目を覚ましたあとは、すごかった。色々と。
そして、私の無表情すげぇやい。
なんで、私は湯浴みさせられてんの。
誰か通訳プリーズ。
てか、キャロルとセチをプリーズ。
私、どうせ過ごすならあの二人と過ごしたい。
なんにも分からないまま、湯浴みをさせられて、綺麗に着飾れて、宴の場に連れてこられた私。
泣くぞ。嘘だけど。
くそぅ。こういう時こそ、仕事しろ。私の表情筋。
「おぉ…これは…!」
「ほぅ…」
『………はぁ…』
「ここへこい。」
グイッとメンフィスに腕を引かれ、メンフィスの隣りに座らせられる。
私と反対方向の隣りにはキャロルがいた。
『キャロル!』
「ナマエ、ナマエ!」
メンフィスを押し退けて、キャロルを抱き締める。
私と同じことをされたのかは、分からないけど、キャロルも私と同じように着飾っていた。
『キャロル、可愛い。』
「そんなことより、ここから逃げないと!セチも捕まっちゃったの!」
『……りありー?』
「イエス。」
いやん。それは確かに助けないとですね。
それにしたって、私のスルースキルぱない。
メンフィス素通り。
まあ、とりあえず、二人を助けるまでは営業スマイル全開でいくかな。
『ふふ。メンフィス様、なぜ私をご召喚に?分からないわ。』
今の私は私じゃないんです。
にっこりと微笑みながら、メンフィスの頬にスルスルと手を伸ばそうとする。
すると、メンフィスは泣きそうになりながら、私の手を掴んで、自分の頬に押し当てた。
あれ?私の思ってた反応と違う。
「あい、りす…」
『アイリス…?残念ながら、私はアイリスではありませんわ。』
何を勘違ったのか、私をアイリスとして見てやらぁ。この弟。私は名前だっつーの。いや、間違えた。ソフィアだっつーの。
「アイリスアイリスアイリスアイリス……逢いたかった…」
『違うっつてんだろぼけぇ。』
思わずぼそりと言っちゃったけど、誰も気にせず私をアイリスと見てるのが分かった。
ただ、アイシスとキャロルだけは、私を私として見てたけど。
てか、今気付いたら、この服って、アイリスの服じゃん。
やば。キレそう。
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bkm