黄金に手を伸ばす 9


「で、どういうことなの?」


ナマエちゃん、大ピンチかもしれない。てへ。

毛布の中に包まっていると、気いてきたキャロルが聞いてきたこと。それを話すことは、私のヤンデレ姉弟のことになるわけで。

うん。やだ。

あの二人に関わったら、私たち死ぬ。私はいろいろ喪失する。のち監禁。キャロルは下手したら、私拘束するための人質になったりするんじゃないかしらかしら。

うん。やだ。(二回目)

そんなことを思いながらも無表情を貫き通す私。

よって、私はシラを切るつもりです。


『へ?なにが?』
「アイリスって人のこと!なんで、ナマエはその人知ってるの?」
『あぁ…奴隷たちの噂を聞いただけだよー。』


ひらひらと手を振って、なんでもないフリ。

心の中では自分にツッコミ。
奴隷が仕事中に噂するんかい。
普通はしないわ。普通は。

キャロルがこんなんで信じるとは思えないけど、とりあえず言ってみただけですはい。


「そうだったの…」


……信じた、だと…?

衝撃的な真実に、思わず横のベッドにいるキャロルを凝視する。
ちょっと妹の将来が心配になった。


「ナマエ、わたし怖いわ…早く、ライアン兄さんたちのもとに帰りたい…」
『……キャロル、こっちにおいで。』


毛布を捲りあげ、自分のベッドにキャロルを招く。

すると、すぐさま嬉しそうにキャロルが私のベッドに入ってきた。
可愛いなこのやろー。


『(まあ、それは置いといて。)大丈夫。きっと、現代に帰れるよ。それに、私も一緒にいるから。ね?』
「そうね…!ナマエ、大好き!」


ギュッと私に抱き着いてきたキャロルに、思わず頬が緩んだ。





メンフィスSide


「姉上、わたしは姉上を愛している。だから、いつかは姉上を娶るのだ!」
『あー…うん。そういうのいいよ。』
「姉上と同じ気持ちで嬉しいぞ!」
『いや、意味ちが、』
「ふふ、その時はわたくしも一緒にね。」
『いや、だから、』
「「愛してる/愛してるわ」」
『(……ナマエちゃん、涙目。)』

「……夢、か…」


目を開くと、彼女がいない世界。

あぁ、わたしの愛しのアイリス。
我が妃になると約束したのに、我が妃にならぬまま、わたしの元を去ったわたしのアイリス。

夢の中でも、お前と出逢えることがまるで奇跡のようだ。

ナイルを頂き、自分の愛した者を奪ったナイルに祈りを捧げる。

我が姉上、アイリスを我が手中に返してくださるよう。
どうか、もう一度、あの黄金の瞳にわたしが映るよう。


「ナマエ、ナマエ!ナイル河がこんなにキラキラしてるわ!」
『わ、本当だ。(久しぶりに見ると、やっぱ綺麗だわ。)』


聴こえてきた声に、そちらを振り向く。

すると、そこにいたのは、アイリス姉上を思い出させるような、黄金の瞳に黄金の髪を持った娘と、黄金の髪を持った蒼い瞳の娘。


「アイリス…!」


思わず、アイリスの名を呟く。

黄金の瞳を持った娘は、顔はアイリスと全く似ていないのに、何故かアイリスと同じ雰囲気を持った娘だった。


「あ…!」
『げ…、』

「あ!待て待てーっ!!何者だ!!」

娘二人は、わたしに気がつくと、すぐさま逃げ出してしまった。

それを追いかけようと、すぐさま走り出すが、メヌーエに掴まれ、追いかけることは叶わなかった。


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