金盞花に哭く 12


温かい水のような場所で目が覚めた。
傍らには、私と同じ子がいた。
それが、この世界での一番最初の記憶。

そして、私はまた産まれた。

今度は本の世界に。
悲しかった。虚しかった。

有沢名前。
それが今の“わたし”の名前。

今度は、わたしはあの本の主人公の幼馴染の双子の妹として、この世界に産まれた。

わたしは前の世界で識っていた知識を誰にも言わなかった。

わたしは一護くんのお母さんを見殺しにした。
識ってたのに。怖くて、助けることなんてしなかった。

一護くんは、そんなわたしの考えなんて知らずに、わたしを姉のように慕ってくれる。それに心がツキツキする。

一心さんは、わたしの心を知ってる。
彼はわたしが体内に所有してる刀に、春夏秋冬に気付いた。彼もまた、死神だったから。

竜貴ちゃんは、わたしを大事にしてくれる。
一護くんだって。

だから、わたしは“私”をこの子たちの前では忘れることにしたの。
わたしは、大切にしなくちゃいけないと思ったから。

でもね。やっぱり、シロくんのことを好きな気持ちは忘れられなかった。


一護Side

俺には双子の幼馴染がいる。

有沢竜貴っつー女らしくない、つか男みたいな幼馴染と、その双子の妹である有沢名前。

名前は、小さい頃から俺と同じで霊感の強い子どもだった。
だから、俺は名前が大好きだったし、今でも大好きだ。

母さんが死んだ時も、名前は俺を抱き締めながら、謝ってた。

なんで謝ってんのかは分からなかったが、俺は名前に救われた。
今でも、その話を言うと、名前は悲しそうに笑う。

たつきはシスコンだ。筋金入りのシスコンだ。
俺が名前と話すと、絶対に邪魔する。うぜェ。邪魔すんな。

女らしい名前と、男みたいなたつき。
正反対の二人は、まるで恋人のように仲が良かった。

名前は俺の親父と仲がいい。
なんか知らんが、親父は名前のこと気に入ってる。
あのロリコン親父。気持ち悪ィ。
しかも、遊子も夏梨も名前が好きすぎて困る。


『一護くん?なにムスッとしてるの?』
「……別に。なんもねェよ。」
『?』
「名前お姉ちゃん!お兄ちゃん置いといて、一緒に遊ぼうよ!」
『あ、うん。遊子ちゃんは元気だね。』
「うん!だって、名前お姉ちゃんがいるんだもん!」


今日だって、やっとたつきを撒いて名前を家に連れて来たっつーのに。

…名前取られた。


「一護くぅーん!なになに、名前ちゃん取られていじやけちったか?」
「……死ね!!クソ親父!!」
「ギャハハ!図星か!」


ツンツンと俺の頬っぺたをつつきながら、ニヤニヤと俺を見る親父にイラッとくる。

くそっ!ふざけんじゃねぇぞ!クソ親父が!!


prev next

bkm
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -