あの後、私たちは無事だったけど、私の腕に残ったメンフィスにつけられた爪痕が消えやしない。
あの野郎。
まあ、キャロルにはばれずに済んだし、良いとしよう。
『ふわぁ…』
それにしたって眠い。
「あ、パパ!ライアン兄さん!」
いまだ、ベッドから出られずにゴロゴロと寝ていると、外から聞こえたキャロルの声に私の目はぱっちり開いた。
ライアン兄さん、だと…?
なんでここに来たんだ…
ライアン兄さんといえば、私の一番上の兄さんである。
ちなみに、この兄さん。
めっちゃシスコン。最近は、シスコン通り越してきてる。
ヤンデレ予備軍とか気にしない。
この部屋に来たら…
考えると、ものっそいめんどくさそうだったので、私は起き上がってさっさと着替える。
着替え終わると、タイミング良く、ガチャリと私の部屋の扉が開いた。
「ソフィア。」
『……げ。』
「ぼくの可愛い可愛いソフィア。久しぶりだな。」
そう言いながら、ライアン兄さんは私を引き寄せて、腕の中で私をギュッと抱きしめる。
しかも、その腕がちょうど昨日私がメンフィスに爪を立てられたところに来てて、腕の力とあいまってものすごい痛い。
『兄さん、苦しい。痛い。』
「久しぶりなんだから、しょうがないだろ。」
私を抱き締める腕を緩める気はないとわかったので、私は立ち上がって、リビングに行くことにする。
腕、痛いんだけど。
「……待て。」
『へ?』
兄さんはそう言って、私の腕の裾を思いっきり上にあげる。
はい。そこには引っ掻かれた跡。
兄さんの私を見る目である。
「恋人か。」
『猫、猫に引っ掻かれた。』
まじ、ライアン兄さん恐い。
低い声が、恐ろしさをさらにあげる。
しかも、目が、目に光がない。
「男、なら、さっさと、言え。」
『いや、ほんと男じゃないから。』
「嘘じゃないよな?嘘だったら…」
『嘘じゃない。から。』
尋問か!ってくらい恐いし、しつこかった。
つーか、嘘だったらどうなってたの。
私も、相手も。
そういうのやめてほしいわー。
そのあと、リビングに行く間も、しっかりと私の手を繋いでライアン兄さんは離さなかった。
しかも、何故か恋人繋ぎ。
そんなんだから、いつまで経ってもお嫁さん貰えないんだよ。
誰かシスコンでも、ヤンデレ予備軍でもいいライアン兄さん貰ってくれる人いないかな。
とか、思っちゃうくらい、ライアン兄さんに困っている私です。
prev next
bkm