黄金に手を伸ばす 3


「宮殿に忍び込んだ賊を捕らえたぞ!であえであえ!!」
「王のお命を狙ったふとどき者め!!なにやつ!」


あ、これ。
やっぱりアイシスの力っぽい。

咄嗟にキャロルの後ろに隠れて、キュッと目を瞑る。

私の瞳は今も前世も変わらずに、金の瞳。

絶対、ややこしいことになる。


「上下エジプトを司るメンフィス王を狙うとは!この娘たちも賊の一人かっ!」
「ちっ、違うわ!わたしたちは…、」
『(やばい。)』


キャロルの頭を胸に抱き、護るようにして覆いかぶさる。

すると、私の元弟に髪を引っ張られて、キャロルから引き離された。

この野郎。

しかも最悪なことに、引っ張られた拍子に目を開いてしまった。

この野郎(二回目)


『い…っ、』
「金色の髪!おまえたち、エジプト人ではないな…、この髪の色は初めて見たぞ。さらに金の瞳とは……」
「ナマエ!!」


私の瞳を見て、何を想像してるのかうっとりと目を細める。

その想像してる“何か”が前世の私じゃないことを祈るわ。


「メンフィス!メンフィス!」
「おお、姉上!」
「良かった…無事だったのね…!あなたに何かあったら、わたくしは、アイリスに顔向け出来ないわ…!」


私の元弟メンフィスは、アイシスの声に私の髪を掴んでいた手を離し、アイシスと抱擁する。

私は私で、今にも泣きそうなキャロルを抱擁する。
どうしよう。心の底から帰りたい。


「王に仇なす者はすべて死刑じゃ。その男神への生贄に!」
「えっ?生贄?生贄ってまさか…」


アイシスの言葉に捕らえられた男は台の上に連れて行かれ、両手両足を押さえつけられる。

そしてそのままアイシスが持った短剣で、心臓を抉られ男は絶命した。

いやん。グロテスク。


「女王アイシス様、生贄の心臓を神の祭壇へ。」
「あ、アイシス…?アイシスですって?」
『アイシスって言ったね。』
「まさか、この間助けたアイシス…、そんな、でも、」


混乱中のキャロルちゃん。
可愛いけど、私は冷や汗が止まらない。

なんで、やっと逃げられたと思ったのに、またこの姉と弟に会っちゃうんだ。

ぐるぐるとそんな思いに囚われていると、いきなりキャロルから離され、身体が無理矢理立たせられる。


『ひっ…、』


私を立たせたのは、元弟メンフィスでした。

え、ちょ、やばぁ。


「金の瞳を持つ娘……」
『…っ、』

「弟メンフィス王に仇なす者、すべての死の報いを受けよ!次の生贄はその娘じゃ!生贄台へ!」


私がメンフィスにジッと見られている間に、キャロルが男たちに連れて行かれ、台の上で両手両足を拘束される。

それを見て、本気でヤバさを感じた私は、メンフィスに必死の抵抗をして、逃れようと踏ん張る。


「…逃げるのか。」
『いっ、』


すると、ギュッと腕に爪を立てられる。

ちょっ、がち?

チラリ、涙が出そうな瞳でキャロルを見ると、アイシスがキャロルに短剣を突き立てようとしてて、


「いやーーーっ!!!助けて助けて!!ナマエ!!ジミー!ロディ兄さん!!!」


甲高いキャロルの悲鳴に驚いたのか、メンフィスの力が緩まったとたん、私とキャロルは、私たちの名前を呼ぶ声を聞いた。


prev next

bkm
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -