「宮殿に忍び込んだ賊を捕らえたぞ!であえであえ!!」
「王のお命を狙ったふとどき者め!!なにやつ!」
あ、これ。
やっぱりアイシスの力っぽい。
咄嗟にキャロルの後ろに隠れて、キュッと目を瞑る。
私の瞳は今も前世も変わらずに、金の瞳。
絶対、ややこしいことになる。
「上下エジプトを司るメンフィス王を狙うとは!この娘たちも賊の一人かっ!」
「ちっ、違うわ!わたしたちは…、」
『(やばい。)』
キャロルの頭を胸に抱き、護るようにして覆いかぶさる。
すると、私の元弟に髪を引っ張られて、キャロルから引き離された。
この野郎。
しかも最悪なことに、引っ張られた拍子に目を開いてしまった。
この野郎(二回目)
『い…っ、』
「金色の髪!おまえたち、エジプト人ではないな…、この髪の色は初めて見たぞ。さらに金の瞳とは……」
「ナマエ!!」
私の瞳を見て、何を想像してるのかうっとりと目を細める。
その想像してる“何か”が前世の私じゃないことを祈るわ。
「メンフィス!メンフィス!」
「おお、姉上!」
「良かった…無事だったのね…!あなたに何かあったら、わたくしは、アイリスに顔向け出来ないわ…!」
私の元弟メンフィスは、アイシスの声に私の髪を掴んでいた手を離し、アイシスと抱擁する。
私は私で、今にも泣きそうなキャロルを抱擁する。
どうしよう。心の底から帰りたい。
「王に仇なす者はすべて死刑じゃ。その男神への生贄に!」
「えっ?生贄?生贄ってまさか…」
アイシスの言葉に捕らえられた男は台の上に連れて行かれ、両手両足を押さえつけられる。
そしてそのままアイシスが持った短剣で、心臓を抉られ男は絶命した。
いやん。グロテスク。
「女王アイシス様、生贄の心臓を神の祭壇へ。」
「あ、アイシス…?アイシスですって?」
『アイシスって言ったね。』
「まさか、この間助けたアイシス…、そんな、でも、」
混乱中のキャロルちゃん。
可愛いけど、私は冷や汗が止まらない。
なんで、やっと逃げられたと思ったのに、またこの姉と弟に会っちゃうんだ。
ぐるぐるとそんな思いに囚われていると、いきなりキャロルから離され、身体が無理矢理立たせられる。
『ひっ…、』
私を立たせたのは、元弟メンフィスでした。
え、ちょ、やばぁ。
「金の瞳を持つ娘……」
『…っ、』
「弟メンフィス王に仇なす者、すべての死の報いを受けよ!次の生贄はその娘じゃ!生贄台へ!」
私がメンフィスにジッと見られている間に、キャロルが男たちに連れて行かれ、台の上で両手両足を拘束される。
それを見て、本気でヤバさを感じた私は、メンフィスに必死の抵抗をして、逃れようと踏ん張る。
「…逃げるのか。」
『いっ、』
すると、ギュッと腕に爪を立てられる。
ちょっ、がち?
チラリ、涙が出そうな瞳でキャロルを見ると、アイシスがキャロルに短剣を突き立てようとしてて、
「いやーーーっ!!!助けて助けて!!ナマエ!!ジミー!ロディ兄さん!!!」
甲高いキャロルの悲鳴に驚いたのか、メンフィスの力が緩まったとたん、私とキャロルは、私たちの名前を呼ぶ声を聞いた。
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bkm